『インサイド・ヘッド2』北米で『アナ雪2』超えの新記録 “どん底”だった映画興行に光
第3位はケヴィン・コスナー主演・監督の西部劇映画
第3位はケヴィン・コスナーが主演・監督を務めた西部劇映画『Horizon: An American Saga Chapter 1(原題)』。大ヒットドラマ『イエローストーン』(2018年~)でキャリアの新たな代表作を得たコスナーが、南北戦争を挟む12年間の物語を紡ぎ出す4部作構想の物語だ。すでに続編『Chapter 2(原題)』が8月16日に劇場公開予定である。 ただでさえ大人向けの映画は集客に苦戦しやすい、いわんや直球の西部劇映画は……という現状において、コスナーの取り組みはきわめて野心的だ。事実、週末3日間の興行収入は1100万ドルなので、2作あわせて製作費1億ドルという規模を考えるといささか渋いスタートである。第4位の『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(4週目)とも接戦で、数字が確定した時点でランキングが入れ替わることもありうるほどだ。 しかしながらDeadlineが指摘するように、オリジナル脚本の西部劇であること、また1本あたりの製作費が平均5000万ドルであることを踏まえれば、この結果をむやみに失敗と言い立てるべきではない。初動興収で言えば、同じくコスナーの西部劇映画『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』(2003年)は1404万ドル、時代は違うがトム・クルーズ&ニコール・キッドマン主演の『遥かなる大地へ』(1992年)も1019万ドルだったのだ。ちなみにコスナー作品としては、『ポストマン』(1997年)の520万ドル(製作費8000万ドル)のほうが明らかに失敗だった。 問題があるとすれば、すでに2作目の劇場公開が決まっており、3作目の撮影もスタートしていることと、コスナーが本シリーズのために現時点で3800万ドル以上の私財を投じていることだ。配給のワーナー・ブラザースもまったくコストを負担していないわけではないため、今後の劇場公開になんらかの影響が生じる可能性もある。 Rotten Tomatoesでは批評家40%・観客71%、CinemaScoreでは「B-」評価と、支持率がそう高くないところも問題だ。『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』は最終的に北米興収5833万ドルと上々の成績だったが、こちらは批評家・観客ともに評価が高かったのだ。本作は上映時間3時間という長尺、そのうえシリーズが前提であるところも、観客を呼び込むうえではハードルになったと考えられる。日本公開は未定だ。 第5位には、インド史上最高の製作費が投じられたというテルグ語のSF超大作『Kalki 2898 AD(原題)』が初登場。3日間で547万ドル、水曜日からの5日間で1100万ドルという数字は、インド映画の北米初動成績として屈指のものだ。出演者には『バーフバリ』シリーズのプラバース、アミターブ・バッチャン、ディーピカー・パードゥコーン、カマル・ハーサンら豪華キャストが揃った。 そのほか今週は、オースティン・バトラー&トム・ハーディ主演のバイク映画『The Bikeriders(原題)』が前週の3位から6位へと転落。公開2週目だが、前週比マイナス66%という下落率はきわめて厳しく、ビジネスとしては配信やソフトの展開にかかっている。第10位には、ヨルゴス・ランティモス監督&エマ・ストーン主演の『憐れみの3章』が上昇し、週末の北米拡大公開に向けて弾みをつけた。 北米映画興行ランキング(6月28日~6月30日) 1.『インサイド・ヘッド2』(→前週1位) 5740万ドル(-43.3%)/4440館/累計4億6930万ドル/3週/ディズニー 2.『クワイエット・プレイス:DAY 1』(初登場) 5300万ドル/3707館/累計5300万ドル/1週/パラマウント 3.『Horizon: An American Saga - Chapter 1(原題)』(初登場) 1100万ドル/3334館/累計1100万ドル/1週/ワーナー 4.『バッドボーイズ RIDE OR DIE』(↓前週2位) 1033万ドル(-45.2%)/3312館(-469館)/累計1億6525万ドル/4週/ソニー 5.『Kalki 2898 AD(原題)』(初登場) 547万ドル/1049館/累計1096万ドル/1週/Prath 6.『The Bikeriders(原題)』(↓前週3位) 330万ドル(-66%)/2692館(+50館)/累計1620万ドル/2週/Focus Features 7.『ねこのガーフィールド』(↓前週5位) 200万ドル(-47%)/1762館(-1251館)/累計8964万ドル/6週/ソニー 8.『猿の惑星/キングダム』(↓前週4位) 170万ドル(-55.4%)/1650館(-760館)/累計1億6807万ドル/8週/20世紀スタジオ 9.『Jatt & Juliet 3(英題)』(初登場) 151万ドル/143館/累計180万ドル/1週/WHS 10.『憐れみの3章』(↑前週13位) 150万ドル(+297.6%)/490館(+485館)/累計201万ドル/2週/サーチライト・ピクチャーズ (※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2024年7月1日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります) 参照 https://www.boxofficemojo.com/weekend/2024W26/ https://variety.com/2024/film/box-office/inside-out-2-billion-dollar-global-box-office-milestone-1236049536/ https://variety.com/2024/film/box-office/box-office-a-quiet-place-day-scores-kevin-costner-horizon-misfires-1236057461/ https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/inside-out-2-box-office-quiet-place-day-one-horizon-1235935761/ https://deadline.com/2024/06/box-office-a-quiet-place-day-one-horizon-1235985586/ https://deadline.com/2024/06/inside-out-2-1-billion-global-box-office-1235997925/ https://deadline.com/2024/06/indie-film-box-office-indian-films-kinds-of-kindness-thelma-1235997966/
稲垣貴俊