2人きりの相撲部員、共に音羽山部屋入門へ 親方は元横綱鶴竜 力士と行司、進む道は違っても…
更級農業高校(長野市)の相撲部員の3年生2人が、元横綱鶴竜(かくりゅう)が親方を務める音羽山(おとわやま)部屋へ入門することが決まった。山岸蒼生(あおい)さん(18)は力士を、市川友輝(ゆうき)さん(18)は行司をそれぞれ目指す。部員は他におらず、市川さんは間もなく部屋での修行が始まるため、2人は2年半を共に過ごした相撲場で最後の稽古をした。「また会えるよ」。一回り大きくなって新天地で再会することを約束した。 【アップ写真】相撲場で笑顔を見せる市川さんと山岸さん
長野市の南長野運動公園の相撲場。2人の鍛え上げた体とりりしい顔つきには既に風格が漂うが、笑顔にはあどけなさも残る。ほうきを半円に描いて土俵を整えた。今年の春、顧問と3人で2カ月かけて造り直した土俵だ。基礎練習が始まると、静けさの中、四股を踏む音と回数を数える2人の声が響いた。
励まし合った日々
小学生の頃、お互いに別の地区のわんぱく相撲に出場していた。顔を合わせたのは同校相撲部に入ってから。入部時は3年生と2年生が1人ずついた。後輩はいない。現在、山岸さんは179センチ、115キロ、市川さんは166センチ、81キロ。体格の違いはあるが、やる気が湧かない日も試合で負けた日も、「切り替えていこう」と励まし合った。
忘れられない共通の思い出は、1年時の全国高校総体(インターハイ)団体予選。負けるはずがないと思っていた1番手の3年生が敗退して驚いた。2人は「先輩のためにも負けられない」と奮闘、勝利を手にすることができた。
力士と行司、それぞれの道へ
市川さんは部屋での修行のため10月中旬に学校を離れる。相撲を好きになったきっかけは自分の名前と同じ読みを持つ元関脇の琴勇輝。小中学校では柔道に励み、高校は相撲部のある同校に入った。体の大きさから力士になる道は諦めたが、相撲への思いは人一倍強かった。担任や相撲部顧問とも相談し、相撲界を支える行司の道を選んだ。
山岸さんは高校相撲金沢大会や国民スポーツ大会個人戦などで全国の強豪と競い、自信を深めてきた。2人とも音羽山親方との面接などを経て、部屋への入門が決まった。