堀内恒夫氏、渡辺恒雄氏が元首相待たせて野球の話に「オレの方が焦っちゃった」…悼む
読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡辺恒雄氏が19日午前2時、肺炎のため、都内の病院で死去した。98歳だった。 * * * * 【悼む】 渡辺さんには本当にお世話になった。感謝しかない。監督をやらせていただいたときもそうだし、政治家をやったときもそう。ものすごく率直に発言する方でしょ。だから、中には怖がっちゃう人もいるんだけど、実はすごく人情味にあふれた人なんだよ。 (04、05年に)監督をやるときも「お前を信じてる」って任せてくださった。怒られたことなんか一度もなくてね。むしろ、苦しい時にすぐ電話をくれて「大変なのは分かるが、諦めちゃいかんぞ」って励ましてくれて、退任するときも「ご苦労さん」と優しい言葉をかけてくれた。 参院議員をやった時もそうさ。渡辺さんに勧められはしたんだけど「オレなんかダメですよ。人に頭下げるのがイヤなんですから」って断ったら「オレが協力するからやってみろ。いい勉強になるぞ」って。表立って何かするわけじゃないんだけど、オレが困らないようにいろいろと根回しをしてくれていたんだろうと思う。目には見えない優しさを感じられる人だったよ。 もちろん、豪快な一面もある方でね。監督時代、球宴前にオーナー報告に行った時だったかな。オレと話していたら、秘書さんが渡辺さんに慌ててメモ書きしてある紙を持ってくるわけ。でも、そのたびに渡辺さんは破いちゃうんだよ。なんだと聞いてみたら、ある元首相の方と会う時間が迫っていると。でも、渡辺さんは構わずオレと野球の話を続けているわけさ。元総理大臣を待たせるのまずいだろうって(笑)。オレの方が焦っちゃったよ。 「オレは野球は素人」なんておっしゃっていたけど、球界の仕組みから何から、ものすごく勉強しているのが分かった。巨人を、日本の野球をナンバーワンにしたい、という思いは誰よりも持っていた人だったよ。球界のためにもっと元気でいてほしかったな。今はただ、心からご冥福(めいふく)をお祈りします。(スポーツ報知評論家・堀内 恒夫)
報知新聞社