ライバルの「1歩先ゆく」電動サルーン 最新ポルシェ・タイカンへ試乗 感動するほど気持ちいい
加速する電動パワートレインの技術進化
電動パワートレインの技術進化は、相当に速い。まだ一部のドライバーの要求には応えきれていないとはいえ、新モデルが登場する度に性能は向上する一方だ。 【写真】ライバルの「1歩先ゆく」電動サルーン ポルシェ・タイカン サイズが近いモデルと写真で比べる (145枚) ポルシェ・タイカンが発売されたのは2020年。優秀な走行性能と急速充電能力を、美しいスタイリングのボディで包み込み、AUTOCARでの評価は当初から高かった。それでも2024年が来る頃には、航続距離が物足りなく感じられ始めていた。 そこで、ポルシェはアップデートを実施した。スタイリング的な変化も僅かに加えられたが、今回の中心となったのは技術的な刷新。新しい駆動用モーターとバッテリーが、選択肢の1つとして追加されている。 今回試乗したタイカンは、ターボや4Sの付かない、ベースグレードのシングルモーター版。英国では4454ポンド(約89万円)のオプションとなる、パフォーマンス・バッテリープラスが実装され、容量は通常の82kWhから97kWhへ拡大されていた。 この組み合わせが、現在のタイカンでは最も遠くまで走れる仕様で、カタログ値の航続距離は675km。ただし、今回の試乗で得た電費は5.7km/kWhだったから、実際の距離は560km前後と考えて良いだろう。 これは、435psの最高出力を発揮し0-100km/h加速を4.8秒でこなす、電動サルーンとしては優秀な値。ちなみに、フェイスリフト前から僅かに最高出力は抑えられたものの、最大トルクは上昇している。
穏やかな運転時の気持ち良さへ感動
新しいタイカンの0-161km/h加速は、1.2秒鋭い9.7秒。112km/hからフルブレーキングで停止するまでの距離は、44.6m。これらは、V型10気筒エンジンを積んだE63型BMW M6とほぼ同じ。シングルモーターだと考えると、動力性能も印象的だ。 雪が積もった峠道を頻繁に走ったり、952psのターボSだと自慢したい場合を除いて、ベースグレード以上を選ぶ必要性が筆者には思い当たらない。運転体験が見違えて変化するとはいえないからだ。 シングルモーターのタイカンは、後輪駆動であることを常に感じ取れる。ステアリングは手応えが軽く、フィルターが掛かったように感触が薄いものの、レスポンスはポルシェへの期待通り。グリップ力や安定性は高く、乗り心地もどっしり落ち着いている。 ヒョンデ・アイオニック5 N級に楽しいわけではないものの、運転には特有の魅力がある。筆者が感動したのは、穏やかに走行している時の気持ち良さだ。 アクセルペダルはストロークが長く、角度に応じて加速し、滑らかな速度上昇を引き出しやすい。車内はとても静かで、シートも快適。ワンペダルドライブを無効にし、ブレーキペダルを踏むまで回生が始まらないようにも調整できる。 他方、ブレーキペダルを踏んだ感触はタイカンの数少ない弱点だったが、フェイスリフトで改善され、一貫性は良くなっている。筆者の理想としては、もっと踏み応えが欲しいし、一貫性もさらに引き上げられると思うが、気になるレベルではなくなった。