相模原市はなぜ女性教員の管理職が多いのか? 女性管理職比率36%の理由
なぜ管理職が多いのか?相模原市教委に聞く
女性教員の管理職が今年度は36.2%にものぼる相模原市。教育委員会教職員課の佐々木隆課長は「本当に何もしていないが、自然と上向いてきた」と話す。相模原市教委によると、同市が政令市になった2011年度から女性管理職の積極登用を始めた。2010年度には25.0%だったが、そこから10%以上も伸びている。 理由として考えられる点をあげてもらった。最も強調されたのは「男女関係なく、ふさわしい人を登用する」という方針だ。これはよく聞かれるフレーズだが、簡単なことではない。人材紹介会社アイデムの「人と仕事研究所」の調査「女性活躍の現状と課題」によると、個人・企業共に、男性の方が「組織の統括」や「リーダシップ」の能力・特性が高いと感じているという結果が出た。「企業・個人共に男性の方がリーダーに優れているという固定概念がある」(同研究所)と説明する。 佐々木課長は「元々相模原市教委は男性・女性に能力差があるという前提に立っていない。そこに女性活躍推進の動きがあり、現場の先生の意識も変わったことで急激に登用が伸びたのでは」と指摘する。佐々木課長によると、管理職になる手前の総括教諭といった学校全体をみる教員に女性が就くことも増えている。校長らが能力重視でみたときに、ミドルリーダーに女性を配置することが増え、女性も全体を見るポジションを経験することで、管理職への意欲が高まっていくサイクルが生まれていると推測できる。
恵まれている環境も大きな要因
女性が続けやすい環境が整っているため候補が多いといった背景もある。相模原市は全県1区の都道府県などと比べると異動も狭い範囲で行われ、住居を伴う転勤をしなければならないことはほとんどない。子育て中などで要望があれば「学校の異動にも配慮している」(教職員課)という。育児休暇は3年取得できる。育児休業期間中に2人目を妊娠した場合は4年以上休むこともあるが、代わりの教員が必ず補充される。復帰した教員はほとんどが短時間勤務を取らず、フルタイムで復帰するが、「育児などの事情があれば保育園の迎えなどに間に合う時間に帰れるように運用している」という。 さらに、待機児童になってしまうので復帰できない、ということもほとんど起きていない。相模原市は2016年4月で2年連続待機児童数ゼロを達成。ほとんどの教員が4月入園を目指すので入園できない事例は起きにくいという。 また女性教員の割合も多い。相模原市の小中の教員は女性が56.6%を占めている。女性が多いことに加え、両立環境が整っていることから、管理職候補が多いと予想される。 佐々木課長は「市は2019年には女性教員の管理職の割合を4割にする目標を掲げています。とは言え、これまで通り、特別な何かをするのではなく、女性も男性も介護中の人も育児中の人も、全ての人が働きやすい環境を整えるようにやっていきます」と説明する。