トヨタとNTT、AI・次世代通信活用の運転支援システム共同開発へ…世界基準目指し5000億円投資
トヨタ自動車とNTTは31日、人工知能(AI)と次世代通信技術を活用した運転支援システムを共同で開発すると表明した。自動運転社会の到来を見据え、2030年までに約5000億円を投資し、30年以降の普及拡大を目指す。両社が連携を加速させ、世界基準となる仕組みが構築できるか、注目される。(水野翔太、上地洋実) 【ひと目でわかる図解】トヨタとNTTによる安全運転システム
「交通事故ゼロ」
トヨタの佐藤恒治社長は東京都内で記者会見し、「NTTと基盤を構築し、車の未来を変える。交通事故ゼロの社会に貢献する」と述べ、事故防止が目的であることを強調した。
車載カメラやセンサーで収集した、道路状況やドライバーの状態などの情報を基に、AIが事故の可能性を予見し、ブレーキやハンドル操作などを運転手に指示する。車と通信が高度に一体化したシステムを開発する。
例えば、高速道路で本線に合流する車のスピードが速すぎるとAIが判断した場合、通信設備を通じて本線にいる車に危険を知らせ、減速を指示するといったケースが想定される。
安全技術の向上もあり、国内の交通事故は13年の63万件から22年には30万件に半減した。佐藤氏は「さらに事故率を下げるには、リスクの先読みに挑まなければならない」と、データの多様化や精度の向上を図る考えを示した。
やりとり瞬時に
NTTの島田明社長は記者会見で、「車や運転手、道路などの情報を絶えず収集して学習したAIで、車をより賢く、安全なものにしていきたい」と語った。
システム構築の柱となるのは、NTTが開発を進める次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」だ。光技術を使ってデータを高速かつ低遅延で送信できる。車と基地局などのインフラ(社会基盤)、データセンターとの情報のやりとりが瞬時に行えると期待される。
近年、インターネットと常時接続するコネクテッドカー(つながる車)が増えているが、データ通信量が急増し、電力消費も拡大することが懸念されている。
NTTは、地域に分散するデータセンターにAIのサーバーを収容し、電力効率の高いアイオンを使ってAI同士を連携させ、消費電力を減らす計画だ。