謎の多いビットコインが、いかにして世界の金融市場を揺るがす存在となったか
定期的にビットコインの供給量が減少する半減期は、マイナーにとっては報酬獲得のチャンスが減少するため、不利になるタイミングでもある。だが、過去の傾向を見ると、ビットコインの価格は、半減期を迎えるとその後1年半ぐらいの期間は上昇基調になっていることが多い。新規のビットコインが市場に供給されにくくなるとそれ以後の希少性が高まると考え、購入を考える人が増えるからかもしれない。 長期的に見ると、ビットコイン価格は一時的に下げてなかなか回復しない時期もあったものの、長期的には価格を上げ続けている。その要因はさまざまで、大企業がBTC決済を扱い始めたり、暗号通貨に有利な法改正があったりすれば価格は上昇し、Mt.Goxのようなハッキング事例が話題になったり、中国政府が規制を強化したりすれば下げるといった具合だ。
ここ最近、急激にビットコイン価格が上昇した背景には、アメリカ大統領選挙でトランプ氏が勝利したことが要因として考えられる。以前は暗号通貨に懐疑的な立場だったトランプ氏だが、今回の選挙戦略では考えを翻してアメリカを「地球上における暗号の中心地にする」と述べ、「ビットコインを戦略備蓄する」ことを公約に含めた。さらに自身の家族とともに暗号通貨取引企業のWorld Liberty Financialまで設立した。
こうしたトランプ氏の動きを暗号通貨界隈は歓迎しており、消費者権利擁護NPOであるPublic Citizenなどは、暗号通貨推進派の議員候補への支援額を増加させたという。 さらにトランプ氏は、次期政権におけるアメリカ証券取引委員会(SEC)委員長に暗号通貨推進派のポール・アトキンス氏を指名した。これが決め手となって、ビットコインをはじめとする各種暗号通貨銘柄が大きく値を上げ、ついに史上初の1BTCあたり10万ドルに到達した。
■儲けるのと同じくらい簡単に損をする可能性も 当然ながら、ビットコインが10万ドルの大台を突破したことで、暗号通貨界隈の人々は活気づいており、これが金融システムにおけるビットコインの位置づけの根本的な変革につながると考えている専門家もいる。トランプ氏がビットコイン戦略備蓄制度を設立すれば、さらに価格は上昇するだろう。 もちろん、10万ドルという価格は人々にとってキリが良い数字というだけであり、心理的な要因に過ぎない。当然、ビットコインがその価格を目標にしてきたわけでもない。変動の激しい暗号の世界において、ビットコインの将来はなにも約束されていない。ビットコインのマイニングには大量の高性能コンピューターを並べて非常に高負荷な処理をこなす必要がある。そのために消費される電力は膨大になる(これはAIの強化学習にも共通する問題だ)。