謎の多いビットコインが、いかにして世界の金融市場を揺るがす存在となったか
冒頭に述べたとおり、ビットコインの本来の目的はインターネットを通じた送金を実現することであり、本物のお金のように使えることを目指したものだった。 ビットコインを使った最初の「お買い物」は、2010年5月22日に行われた。フロリダ州ジャクソンビルに住むラズロ・ハニェチ(Laszlo Hanyecz)がインターネットの掲示板に「ピザ2枚を配達してくれれば、それを1万BTCで購入する」と書き込んだところ、19歳の学生がその要望に応じ、ハニェチの家に届くように宅配ピザを注文したのだ。ちなみに、1万BTCは当時、40ドルの価値で取り引きされており、当時の為替相場(1ドル約93円)で円に換算すると、約3720円、1BTCは約0.37円だった計算になる。
ビットコイン愛好家たちは、初めてビットコインで買い物が行われたこの日を「ビットコイン・ピザ・デー」と呼び、毎年、世界各所で記念イベントを開催している。 ■知名度の上昇 2011年になると、ビットコインを使ったオンライン決済を導入する事例が増えてきたが、一方で闇サイト「Silk Road」における違法商品の取り引きにも利用されはじめた。 4月にはタイムズ紙にビットコインが特集されるまでになり、これがビットコインの知名度を大きく引き上げることになった。
6月にはビットコインの取引価格が急上昇し、一時は1BTCあたり31ドルに達したが、同月には東京にある世界最大級のビットコイン取引所Mt.Gox(マウント・ゴックス)がハッキングされ875万ドル以上の被害を出した影響などから、ビットコインの価格は大きく下げ、同年末にはピーク時の1/10程度にまで落ち込んだ。 Mt.Goxは、2014年2月にも保有するビットコインが消失したと述べ、当時470億円相当のビットコインの行方がわからなくなってしまう問題を起こし、12万人以上の顧客が被害を受けた(うち、日本人は1000人程度とされる)。この事件により、Mt.Goxのマルク・カルプレスCEOはビットコイン財団の取締役を辞任、後に自身の口座残高を不正操作しようとして私電磁的記録不正作出・同供用罪で懲役2年6カ月、執行猶予4年の有罪判決を受けている。