面接の最中に社長が内定を出してしまう…中小・零細企業で「社長がまた変なの採ったよ」が繰り返されるワケ
■入社からの1週間を徹底的にサポートする 筆者推奨の体験会を経て、双方間に良好な関係ができていたとしても、気軽な体験会と実際の雇用は、やはり重みが違います。 「体験会ではあれだけ面倒を見てもらっていたのに、入社したら何だか素っ気ない、大丈夫かな?」と思わせないよう、体験会と同じレベルの気遣いをしてあげてください。 特に入社初日から休日に入るまでの1週間は非常に大事です。休日にあれこれ考え込んでしまい、やっていけそうにないと決断して翌週に出勤しないというケースがありますから。 「新人をそんなに甘やかしてどうする」、「私の時はこんなに手厚くなかった」と社内で反発する社員が出てきますが、時代が違います。せっかく入社してくれたのだから、そういった声は黙らせて、大切に扱ってください。 ■知らされていないから、好ましくない事態に陥る 具体的には、「初出勤はいつ、どこへいけば良いのか?」「持参物は何か?」「ドレスコードは?」といった細かいところまで気を使いましょう。 たとえば9時始業として、新人が8時50分に着いたら、既に朝礼が始まっていて気まずい思いをした上に、先輩社員から「新人なのに最後に出勤ってなめてるよね」と怒られたりすると、もう最悪です。 事前にきちんと案内しておかないから、こうなるのです。簡単で良いので、出勤時間や持参物、ドレスコード等、入社初日の注意点をまとめておきましょう。 初日のランチは、体験会と同じやり方で進めてください。 2日目以降のランチについては、ふだん社員はどうしているかといった子細なことも含めて、きちんと案内してあげましょう。「今日も誘われるかもしれない」と思っている新人を待たせた挙句、誘わずに結局一人で行かせる等は、ろくな結果を招かないので絶対に避けて下さい。今の時代、配慮が足りないと言わざるをえません。
■スキル不足や不慣れをフォローする 面接や体験会で高評価だったとしても、いざ入社してみたら期待外れということもあるでしょう。 期待値が高すぎるのが原因であれば、一般的、平均的な社員と同じパフォーマンスを発揮してくれれば良い、とハードルを下げておきましょう。 そもそも即戦力で高いパフォーマンスを発揮する人材は、中小零細企業にはまず来ません。そのため、期待外れな人はさっさと辞めてもらって次を探せば良いという考えは捨て去ってください。 また一般的、平均的な社員よりもスキルが不足していたら、それを埋めてもらうしかありません。これに近道はありません。 たとえば、 ---------- ・業務に必要なスキル修得のためのロードマップを新人と一緒につくってみる ・目標管理制度(MBO)を取り入れてみる ・日々、学んだことをまとめさせる ・定期的に習熟度合いをチェックする ---------- といったように、地道で手間暇のかかる人材育成を続けるしか術はありません。 ■全社を挙げて新人をサポートする 不慣れな環境ですから、仮に実力があってもなかなか発揮するのは難しいでしょう。既述のメンター制を含め、全社を挙げて新人が職場、仕事になじむ雰囲気づくりに取り組むべきです。 慣れるまでは、残業や休日出勤は免除してあげる方が良いでしょう。既存社員と同じペースでできるようになるには、やはり相応の猶予期間が必要で、おおよそ1カ月から3カ月くらいはかかると見ておいてください。 いずれにせよ、せっかく入社してくれた社員をぞんざいに扱うのは絶対にNGです。これは甘やかすこととは違います、大切に育てていきましょう。 ---------- 中谷 充宏(なかや・みつひろ) 社会保険労務士、キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント) NTTでSE、リクルーターを務めた後、1社で採用人事を含む経営企画を担当。2004年に独立開業。社労士として埼玉、東京を中心に中小企業の労務顧問を多数担い、2社の人事部長を任される等、現場最前線で人事労務コンサルを実践、労務問題と解決策を熟知。特に「モンスター社員」対策に精通。キャリアカウンセラーとして埼玉県教育委員会や自治体が運営する就労支援機関、4つの大学のキャリアセンターでの勤務を通じ就職支援実績が豊富。日本では数少ない、応募者と採用者の両面を熟知する存在。NHK、読売新聞、マイナビ転職等マスコミ取材実績多数。著書に『面接官が本音で教える集団面接・GD完全対策マニュアル』、『20代~30代前半のための転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)等がある。 ----------
キャリアカウンセラー(キャリアコンサルタント)、社会保険労務士 中谷 充宏