山形⇔福島 相互に農作業働き手を募集 JA全農が人手不足対策
「従業員を自前で探すのは大変」
JA全農は、農繁期が異なる2県間で相互に作業員を募り農家を支援する取り組みを行っている。隣接する2県間の産地間連携による労働力支援策は初めて。山形県内で募集した農作業ツアー参加者による福島県南相馬市での作業が20日、報道陣に公開された。 山形県内では、サクランボなど果実の収穫を中心に春~秋に慢性的に人手が不足。一方、福島県内では冬に収穫を迎えるブロッコリーの出荷作業を行う人手が必要になる。相手県内で農作業従事者を募集することで求人の競合を避け、安定的な人手確保を図る。 本年度は6~10月、山形県内で行うサクランボや西洋梨の収穫などに福島県内から延べ23人が参加。福島県南相馬市の農家には、主にブロッコリー収穫のため、来年1月まで労働力支援を行う。 この日公開されたホウレンソウの出荷調製に、山形県内から2人が参加。加工業者に出荷するホウレンソウを1枚ずつ丁寧に分別した。同県寒河江市のサクランボ農家、軽部賢太さんは、収穫期に福島県から応援を受けたことから「恩返し」のため参加。「車で2時間程度と近距離だった。福島から気軽に農作業に来てもらいたい」と語った。 ブロッコリーなど野菜を計約20ヘクタール栽培する菊地洋一さんは「従業員を自前で探すのは大変。作業員の確保が見込めると営農計画も立てやすい」と喜ぶ。 ツアーの運営は旅行業大手、JTBが行う。農水省の労働力確保体制強化事業を活用し、参加者の交通費や宿泊費に当てる。全農東北営農資材事業所TAC・生産対策課の西村英治課長は「産地間連携で赴いた後、その地域のファンづくりにもつなげたい」と語る。 (山口圭一)
日本農業新聞