小田急ロマンスカーの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
色あせぬ独特の味わい
筆者(西山敏樹、都市工学者)は都内の大学で教壇に立っている。神奈川県の西湘に住み、通勤やレジャーに小田急ロマンスカーを愛用している。 【画像】えっ…! これが小田急電鉄の「年収」です(計10枚) 結婚するまで東京に住んでいたが、通学や通勤にはロマンスカーに頼っていたし、なにより歴史が古く、独特の味わいもある。 本稿では、筆者がロマンスカーを「やばい!」と思う四つのポイントについて解説する。
やばいポイント1「ロマンスカーという名称」
筆者は、ロマンスカーという名前が素晴らしく魅力的だと思う。鉄道好きの人には、「京阪や東武も昔は使っていたじゃないか」とツッコまれるかもしれない。 それでも、小田急はこれを箱根・御殿場・江ノ島行きの特別な車両としてブランド化し続け、自社の代名詞となった。その結果、 「ロマンスカーといえば小田急」 というイメージが定着した。ロマンスカーとは、戦後に普及した映画館や喫茶店などに設置されたふたり掛けのシート 「ロマンスシート」 を装備した鉄道車両を指す。ロマンスとは、もともと「空想的・冒険的・伝奇的な要素の強い物語」、つまり中世の欧州に多く見られた恋愛と武勇を題材とした物語を意味し、やがて恋物語や恋愛小説を意味するようになった。 ・恋愛の物語 ・人生の冒険の物語 その物語の展開を感じさせる、実にステキな名前が「ロマンスカー」であり、筆者はとても憧れている。
やばいポイント2「高速鉄道時代を開いた元祖」
1957(昭和32)年に登場した本格的なロマンスカーの始祖であるSE車3000形は、当時の鉄道車両としては驚異的な技術力を誇っていた。SE車には、当時としては素晴らしい次の技術が採用されていた。 ・車体の強度を保ち軽量化も可能なモノコック(張殻)とハニカム(蜂の巣)の新規採用。 ・模型を使って繰り返した風洞実験の成果を反映した流線型の前面。 ・軽量化と並行して、車体の走行安定性を維持するための重心低下。 等の航空技術が応用され、まさに航空イノベーションと鉄道車両の融合の一例として知られている。 そして、ロマンスカーといえば「連接台車」である。車両と車両の間に台車を設ける方式である。耐荷重に課題があるとの指摘もあるが、 ・カーブでの通過 ・編成単位での軽量化 ・快適な乗り心地の実現 などのメリットがあるとされている。SEとその後のNSE3100形、LSE7000形、HiSE10000形,VSE50000形に採用された 東洋電機製造の「中空軸平行カルダン駆動方式」、近畿車両がライセンス生産したスイスの「シュリーレン台車」、現在の東芝製制御装置などが、性能と車両の軽量化に貢献するとして採用された。 また、国鉄東海道本線の高速試験で時速145kmを記録し、当時の狭軌鉄道の世界記録を樹立した。この設計は、新幹線0系の誕生にも影響を与えた。この伝統を感じながらロマンスカーに乗るのもまた、味わい深い。