令和の声と平成の声『最初のテレビ「ボンボン人生万才! -子どもの頃-」』/テレビお久しぶり#134
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『最初のテレビ「ボンボン人生万才! -子どもの頃-」』(テレビ朝日)をチョイス。 テキスト・コミュニケーション『文字メンタリー』/テレビお久しぶり#133 ■令和の声と平成の声『最初のテレビ「ボンボン人生万才! -子どもの頃-」』 当連載ではもうお馴染みの、月替わり番組『バラバラマンスリー』。水曜の深夜2:57から1カ月限定で放送されるのは、全編モノクロのコント番組『最初のテレビ』。テレ朝地下で発見された謎のフィルムには、1960年代に放送されていた『ボンボン人生万才!』というテレビ番組が収められていた……。素晴らしくワクワクする設定で、『このテープもってないですか?』を思い出すような番組だ。余談だが、私は『このテープ~』で紹介される『坂谷一郎のミッドナイトパラダイス』を、マジで過去に存在した番組だと思い込みながら見ていた。私は案外リテラシーが低く、それが可愛げでもあるのだが、いくら何でもこの『ボンボン人生万才!』を実在した番組だと勘違いすることはなかった。映っているのが思いっきりせいやだからである。 他にも、ヨネダ2000、トニーフランク、蛙亭イワクラといった芸人勢や、”ネオ昭和アーティスト”として活動する阪田マリン、昭和レトロアイドル・増田樹乃らが出演。古めかしく加工された映像や音声で、1960年代のテレビの雰囲気を再現していく。 私はこういう、いかにも懐古趣味(とはいっても、実際に60年代を過ごした演者はいないのだが)な作品は何でも好きだ。そもそも懐古趣味が大好きで、暇さえあれば懐古している。休日はもっぱら友人らと懐古をし、趣味を聞かれれば迷わず懐古ですと答えるだろう。私ほどではないかもしれないが、せいやも相当楽しんでいるように見え、(20代の立場から雑な言い方をすれば)”昔の人”の独特の語り口をいきいきと再現している。『人生万才!』のホストを務めるせいやは演者としてコントにも出演しており、イワクラと演じた『夫婦喧嘩』はメチャクチャ笑った。「茶色ゴキ虫」という台詞は、まだそんな言葉がこの世に眠っていたのかと感動すらしてしまった。 人間は、顔や声や喋り方が時代によって変わっていく。特に喋り方は顕著で、せいやも当時っぽさを出すために、喋り方を最も意識して演じている。いま平成の喋り方をする人というのはほとんどいない。ちょっと説明が難しいのだが、平成の喋り方というのがあって、実際、平成を生きた多くの人がイメージできるものだと思う。個人的に言うと、令和の喋り方には落ち着きがあり、平成の喋り方はそわそわしている、というようなイメージだ。令和の声と平成の声というものもある。私の中で、あいみょんはかなり令和の声だ。対して平成の声といえば、倖田來未や浜崎あゆみが当然思い浮かびつつ、矢井田瞳があらわれる。平成に活躍したアーティストなのだから、平成の声なのは当たり前なのだが、ともかく、あいみょんの声は令和で、矢井田瞳の声は平成である。私がもっぱら実施している懐古とは、こういうものだ。興味のある方がいれば、是非一緒にやりましょう。 ■文/城戸