Googleストリートビューに「映り込んじゃった人」が明かすGoogle社員の意外な証言
今や経路検索などで必需品になったグーグルマップ。その機能のひとつであるストリートビューは撮影年が選べるが、この機能を設けた理由に、日本が関係していた。グーグルマップのすごさを地図研究家が紹介。本稿は、今尾恵介『地図バカ 地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 「地図好き」には信じがたい イージス・アショア騒動のお粗末 某国からミサイルが飛んできた際にこれを撃ち落とすというのが、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」である。令和元(2019)年、数千億円にのぼる高価なこの防衛装備をアメリカから購入することになって当時のトランプ大統領は大喜びした。 もっとも翌年には河野防衛大臣が計画停止を表明することになるのだが、設置場所について防衛省は国内にいくつか候補地を挙げ、綿密に検討してきたという。 候補地とされた2カ所のうち秋田市新屋では住民が納得せず、これを受けて当局は代替地をいくつか探し、それらの土地は近くの山がレーダーの障害になるから不適当であるという報告書を提出した。 ところがその根拠となった「仰角」の数値が間違っていたことが発覚。仰角は文字通り山や星などを仰ぎ見る角度であるが、実際には最大で4度のところを15度と記載していた。大違いである。 担当者はグーグルアースを使って断面図を作成、これを測ったのだそうだが、これを知って私はそれこそ「仰天」した。
一般に地形の断面図を作成する場合、距離と高さを1対1にすると凹凸がわかりにくいため、高さを何倍かに誇張して表現するのは戦前からの常識だ。それを知らなかったというのだから、「地図好きな一般人」より地図に親しんでいなかったようである。 自衛隊には当然ながら地図情報に関する専門組織もあるが、その部署に相談することもなく発表してしまったのはお粗末だ。これでは「結論ありき」と批判されても仕方がない。考えたくはないけれど、イザ「本番」という時に大丈夫かどうか心配になる。 ● アメリカ国防総省レベルの情報 地図好きも関心するグーグルマップ この1件は、それだけみんながグーグルの地図を身近に使っている証拠であるが、今や誰もが待ち合わせ場所や宴会場の位置を知らせるのに、この図を添付するのは当たり前になった。グーグルマップが出始めた頃、私はパソコン画面を航空写真モードにして、世界中を眺めては楽しんでいた。これをやっていると時間がいくらあっても足りない。 最初の頃は地図も航空写真も縮尺にだいぶ制約があって、ぼんやりとしか見られない場所が多く、詳細が見られるアメリカ合衆国内でもホワイトハウスは建物の一部に目隠しの「色塗り」が施されていたり、連邦議会の議事堂にはモザイクがかかっていたりした。