名スカウトが選ぶ「本当にドラフトで獲るべき7人」
浦和学院の渡邉勇太朗が素材では一番
東洋大の3人はそれぞれに特徴がある。 U-18代表との壮行試合で侍ジャパン大学代表で158キロをマークした甲斐野央はストッパータイプ、上茶谷大河は春の駒沢大戦で1試合20三振を奪って脚光を浴び、梅津晃大は最速153キロの身長187センチの大型だ。 「3人の中では上茶谷がワンランク落ちる。下半身に粘りがなく1球1球のバラつきが激しい。甲斐野と梅津についてはスカウトの好き嫌いが分かれるだろう。甲斐野はストッパータイプ。ボールに力はあるが、制球がまとまってこないときは苦しい。梅津は、テイクバックが小さく打者がタイミングを取りにくいフォームだが、もう半歩、下半身が前に出てこないと安定感につながらない」 片岡氏の評価は厳しい。 今ドラフトには、大谷翔平、藤浪晋太郎クラスの長身投手が揃っているが、将来性を見込んだスケールの大きさで魅力を感じるのは、夏の甲子園で8強に進み、U-18 代表に選ばれた浦和学院の渡邉勇太朗だという。 「素材という点では渡邉が面白い。重い質感のボールを投げ、長身投手の特徴であるボールに角度がある。190センチあるわりに体を柔らかく使える。今年は“間違いない”という即戦力投手が不作なので、外れ1位で指名する球団もあるのではないか」 投手では上位候補として社会人の生田目翼(日通)、齋藤友貴哉(Honda)、高橋拓巳(日生)の名前が上がり、日体大の東妻勇輔や、早稲田の左腕・小島和哉らがリストアップされているが、「齋藤はいいボールと悪いボールが極端。生田目は、アーム式に腕を使うが昨年中日に1位指名された鈴木博志くらいの馬力がある。東妻はまだ体を使いこなせていない。即戦力としては、ボールにばらつきがある投手は厳しい。日体大の松本以外は、多少は時間がかかることを承知で、伸びシロと素材を評価した指名になるのではないか」と、厳しい見方をしている。
面白いのは亜大の「打てる捕手」頓宮裕真
野手では、根尾、藤原、小園の高校ビッグ3は外せない。 「本当の意味での即戦力投手が少ないという今回のドラフト事情が、根尾への複数球団の重複という現象を生んでいると思う。本人も希望しているらしいが、プロでは二刀流ではなくショートだろう。バッティングのうまさは、阪神で新人王をとった高山俊の入団時に重なる。プロの体になってくればパワーも増すだろう。どのチームもセンターラインの強化は課題。こういう何年かに一人のショートに触手が動くのは当然だ。選球眼がよく、我々の世界では“球つきがいい”と表現する選手。そこにセンスを感じる」 中日、ヤクルト、巨人の3球団が1位指名を公表。楽天、日ハム、横浜DeNAあたりも狙っていて最大6球団の重複指名が予想されている。 「同じくショートの小園も、肩と足があり守備範囲が広く守りならすぐ使える。バットコントロールも非凡だしソフトバンクとオリックスが1位指名を公表したのも理解できる。 外野か、内野か、それぞれのチーム事情によるのだろうが、私がスカウトなら3人の中では藤原を指名する。足と肩にシュアなバッティングの3拍子が揃っている。足と肩は、もうプロでも遜色のないレベルだから1年目からでも1軍で使える。インサイドを苦にせず、バットの出がいいのでベンチが我慢できるならプロのピッチャーに対する適応は清宮幸太郎よりも早いだろう。将来は、トリプル3を狙える。阪神の糸井嘉男の高校時代より素材として上だ」 片岡氏絶賛の藤原は、ロッテが1位を公表。ドラフトの戦略的に競合の少ない選手の確率を追う阪神、広島が参戦する可能性もあり、彼もまた抽選に運命を委ねることになる。 名スカウトが、7人目に付け加えたのが、亜細亜大の頓宮裕真だ。捕手、一塁で起用されているが、U-18との壮行試合では、侍ジャパン大学代表の4番に座り、市川悠太(明徳義塾)からレフトへ豪快な一発を放った。リーグ戦通算14本で、この秋に5本塁打。182センチ、88キロ。一発の魅力を秘めた「打てる捕手」は、どの球団も欲しい。強肩で意外に足も速い。ただ、この手の大学出身の右のプルヒッターは、昨年、楽天が2位で指名した岩見雅紀(慶応大)が、まだ1軍で結果を出せていないように評価の賛否は分かれる。 「もちろん1位ではないだろうが、こういう選手こそプロがドラフトで指名しておかねばならない選手だ。西武の山川穂高や、おかわり君(中村剛也)のようなホームランバッターになる可能性を秘めた右のパワーヒッター。面白いじゃないか。意外と選球眼もいい」 いずれにしろ根尾、藤原、小園の3人クジ引きとなることは確実。悲喜こもごものドラマが待つ運命のドラフトは、いよいよ本日――。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)