221年ぶりに周期ゼミの集団がもうすぐ同時に大量発生、合唱は「ジェット機並み」の爆音か
なんと江戸時代以来、“一生に一度”どころか“五生に一度”レベルのレアなイベント
2024年の4月下旬から6月にかけて、米国の南東部から中西部で、200年の時を超えて大自然の交響曲が奏でられる。周期ゼミの2つの集団が221年ぶりに同時に姿を現しはじめるのだ。「今年はとても重要な年になるでしょう。神秘的で驚くべき出来事です」と、「虫博士」として知られる米ミズーリ大学のタマラ・リオール氏は言う。 ギャラリー:「当たり年」の周期ゼミの大発生 写真8点 221年ぶりなのは、2つの集団の周期がそれぞれ13年と17年だから。前回同時に姿を現したのは1803年のこと。米国大統領はトーマス・ジェファーソンで、江戸幕府の将軍は第11代の徳川家斉だった。 リオール氏によると、次回起こるのは2245年になる。「私たちの5世代後になるまで、この2つの集団が同時に現れることはありません」 2つの集団が地上に現れたときの鳴き声は、100デシベルに達する可能性があるという。「ジェットエンジンと同じくらいのレベルです」と、リオール氏は言う。「今年は、とてつもなくうるさくなるかもしれません」
ホットスポットはどこか
周期ゼミは、毎年目にするセミとは違って、13年または17年の周期で群れをなして発生する。ほとんどの種は、体が黒く、目が赤く、翅脈(羽の筋)は赤味がかったオレンジ色をしている。 地理的にも違いがある。2024年に発生する周期ゼミは、「ブルードXIII(13)」と「ブルードXIX(19)」と呼ばれる集団だ。 ブルードXIIIは、インディアナ州、アイオワ州、ウィスコンシン州、イリノイ州の一部を含む中西部で、17年ごとに発生する。 ブルードXIXは、周期ゼミの中で地理的に最も広く分布する集団で、13年ごとに発生する。アイオワ州、イリノイ州、インディアナ州に加え、南東部のアラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミズーリ州、ミシシッピ州、ノースカロライナ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テネシー州、バージニア州、メリーランド州で見られる。 セミたちが現れたことを最初に認識できる兆候は、芝生や木の周辺、林などの地面にできた穴だと、米マサチューセッツ大学アマースト校の生態学者のゾーイ・ゲットマン・ピカリング氏は言う。 「暖かくなると、セミの幼虫がこうした穴から出てきます。とにかく驚くほど大量に出てくるはずです」とゲットマン・ピカリング氏。通常、セミの成虫は4週間から6週間しか生きられない。「彼らが交尾して死ぬまでの間に、信じられないほどうるさい鳴き声を耳にすることになるでしょう」 今回発生するセミの総数は、数十億匹なのか数兆匹なのか、まったく想像がつかないという。「セミの集団の個体数を推定するのは難しく、厳密な数がどれくらいなのかは、科学者も把握できていません」と、ゲットマン・ピカリング氏は話す。 ただし、周期ゼミが同時発生する地域に、突然「倍の数のセミ」が現れるというわけではない。実際にブルードXIIIとブルードXIXの生息域が重なるのはイリノイ州中央部の一部だけで、どちらも集団の生息域の端のほうなので、中央部ほど密度は高くない。 米マウント・セント・ジョゼフ大学の昆虫学者、ジーン・クリスキー氏によると、2つの集団の生息域が重複する範囲は非常に狭く、ほんの数キロほどだという。 「セミの数が倍になる『セミのハルマゲドン』が到来すると考える人が多いのですが、そうはならないと思います」と、50年にわたってセミを研究し、セミの分布を確認できる市民科学アプリを開発したクリスキー氏は述べる。