認知症になると「認知症保険」は請求できない…「老後の備え」をうたう人気商品のとんでもない落とし穴
■保険の要否を判断する「3つのポイント」 ポイント1 要介護となった65歳の人は誰でも公的サービスを受けられる まず、認知症に罹患して介護が必要になったときには公的サービスを受けられます。 2000年、わが国で公的介護保険がスタートしました。これまで家族が担っていた介護を、家族ではなく社会全体で担うしくみで、市区町村が要介護と認定した65歳以上の人は、介護状況に応じたサービスをいつでも受けることができます。末期がんや脳血管疾患などの特定疾病に罹患して要介護となった40歳以上の人もサービスを利用できます。 公的介護保険では、ひと月に受けられるサービスの利用限度額が要介護度別に定められており、利用者はその1割~3割を、所得に応じた自己負担でサービスを利用します。サービスには自宅で受ける「居宅サービス」と、施設で受ける「施設サービス」があり、居宅サービスの場合、1カ月あたりのサービスの量(利用限度額)は図表1のとおりです。 たとえば、要介護3と認定されている場合、ひと月で27万480円を上限としたサービスを受けられます。よって上限額までサービスを受けた自己負担割合2割の人の月あたりの自己負担額は、27万480円×2割=5万4096円と計算できます。ただし、ひと月に支払った自己負担額の合計が所得区分に応じた限度額を超えると、超えた分が払い戻される「高額介護(予防)サービス費制度」があるため負担は軽減されます。 前述の例でみると、年収770万円未満の市民税課税世帯の自己負担上限額は4万4400円ですから、約1万円の払い戻しを受けられます。公的医療保険における「高額療養費制度」と同様、実際の負担がどの程度かは事前に把握できるのです。
■医療と介護の「自己負担」を軽減させる制度がある 高齢者は介護サービスだけでなく、同時に医療を受けたりして、ダブルの負担となることも多いですが、この場合はまた別に自己負担を軽減できる制度があります。 公的医療保険で高額療養費の支給を受けたあとの自己負担と、公的介護保険で高額介護(予防)サービス費制度を利用したあとの自己負担の合計額が、1年間(8月1日~翌7月31日)で限度額を超えたときは、「高額医療合算療養費制度」による払い戻しを受けられます。図表3の通り、年収と年齢に応じて上限額が決まります。 たとえば、前述の例と同様、年収770万円未満の住民税課税世帯の医療費および介護費の自己負担上限額は年齢を問わず年間合計67万円となり、これを超える負担をした場合、払い戻しを受けられます。医療と介護のダブル負担となる場合も、実際の負担はあらかじめ把握できます。 なお、入院時の差額ベッド料や食事療養費、居住費などは医療保険・介護保険のいずれも払い戻し対象ではなく別枠で負担します。 知らない故か、介護費用のイメージと現実の負担にはかなりギャップがあるようです。一般世帯にむけた調査(※)では、世帯主または配偶者が要介護状態となったとき、公的介護保険の範囲外で必要と考える費用が平均約15万8千円との回答に対し、公的介護保険の自己負担を含む月あたりの実際の介護費用の平均額は8万3千円に収まります。不安を増大させないためには、やはり知識が必要だということでしょう。 ※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」2021年度 ■右肩上がりで増える介護保険料、子ども・子育て支援金… ポイント2 家計負担を増やさず先々に備えるべき これらの給付を得るためには負担も必要です。公的介護保険制度の財源は50%が公費、残り50%が40歳以上の人が負担する保険料で賄われます。高齢者が負担する介護保険料は3年に一度見直され、国が決める基準額をもとに各市区町村や広域連合が決めます。よって住むところにより保険料は異なります。