バリアフリーも洗練された 大改造!!劇的ビフォーアフターが見た家の課題
「なんということでしょう」というフレーズで知られるバラエティー番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」(ABC・テレビ朝日系列)。2002年に放送がスタートした長寿番組だが、番組作りの姿勢や世の中の住宅が抱える課題はどう変わってきたか? それにどう向き合ってきたのか? ABC朝日放送の担当チーフプロデューサーの井口毅さんに話を聞いた。
井口さんは、1993年入社。2002年の番組レギュラー化当初から立ち上げに携わった。途中、ほかの番組制作に関わっていたが、2014年からはチーフプロデューサーとして再び同番組作りに。井口さんは「表層はリフォームだが、やりたいことは家族の話。家のリフォームを通じて、家族のビフォーアフターを描きたい」と話し、一貫してその姿勢は変わっていないという。
ビフォーアフターは“推理小説”
住宅リフォームを真正面から「改築の過程」として取り上げるならば、それはともすると、淡々とした息が詰まるような番組構成になったかもしれない。それを、バラエティーとして見せるところに工夫がある。「この番組は、言ってみれば推理小説なのです」と井口さん。 問題を解決する建築家=匠(たくみ)はいわばシャーロック・ホームズ、つまり探偵だ。番組中、匠が物件の課題を見聞する様子を「現場検証」と言っているのは、事件が起きていることのメタファー。第一章、第二章と切っているのは、推理小説の章立てを意識している。 そして、「匠がこの問題をどう解いていくのか?」と視聴者と一緒に楽しむために、所ジョージさんをMCとしたクイズのコーナーがあるというわけだ。番組では、所ジョージさんが次々とクイズを当てていく。「事前の打ち合わせはあるんですか?」と聞くと、井口さんは「収録の横でスタッフが『すごいよ!当てたよ!』と驚くくらいなんです。事前の打ち合わせはありません」と説明してくれた。
変わらない狭小リフォーム、増える耐震リフォーム
番組に寄せられる依頼は、1週間に数十件。来年にも番組としてトータル300件のリフォームを手がけることになる。今も昔も変わらないのは、日本の住宅事情を反映した狭小住宅のリフォームだという。トイレと玄関、台所とシャワーが一緒になっていたり、建物に挟まれて陽が当たらなかったりといった問題を匠(たくみ)が解決していく様子は、すでにお馴染みだろう。狭小住宅は都市圏に多い。特に大阪は狭小具合が強いという。10坪に満たないことも多い。「忍耐強く住まわれて、一気にリフォームをする依頼が多いようです」。 逆に依頼が増えているのは耐震リフォームだという。言うまでもなく、きっかけは東日本大震災だ。番組内では、太陽の光を取り入れる工夫をしたり、素敵な屋上デッキができたりと華やかな面に目が行きがちだが、地震への備えは地味だが、重要だ。「地震に対しての備えについて、意識が高まっていると感じます」と井口さん。