【秋ドラマ】「もう号泣ですよ」定時制高校を描く話題のドラマ『宙わたる教室』 原作者・伊与原新が選んだ名場面ベスト5
第4話「金の卵の衝突実験」
教室のうるさいじじいだった長嶺が過去を独白する場面 青年時代、高校に通えず働くしかなかった70代の長嶺は、名優・イッセー尾形さんが演じています。 その過去を教室で話す独り芝居には、ただただ圧倒されました。怒りがベースにあるわけですけれど、その怒りの表し方は誰にも真似のできないものだと思います。 長嶺 「若い頃私を動かしていた怒りはね、外に向かってた。今は、自分に向かってます。許せない、自分が。なぜ私じゃなく、妻なんだ!」 年齢とバックグラウンドの違いで、激しく対立していた長嶺と岳人は、これ以降、だんだん歩み寄っていきます。 経営していた町工場で、長嶺が岳人に「飯、食うか?」と誘う場面(第7話「浮遊惑星のランデブー」)もジーンと来てお勧めです。
第6話「コンピューター室の火星」
コンピューター部部長の要と弟の子供時代の回想場面 これもドラマのオリジナルの部分です。全日制の生徒でコンピューター部部長の要は、弟が家庭内で暴れたことで、高校受験に失敗。家でプログラミングすることもままならず、弟の衛に憎しみさえ感じています。 そんなときに小学校の頃、自分が弟にプレゼントした自作のゲーム機を発見し、当時のふたりの関係を思い出すんですね。 衛 「――これ、兄ちゃん作ったの?」 要 「そうだよ」 衛 「……すげえ。兄ちゃんかっこいい」 兄を尊敬する弟と、弟を可愛がっている兄……自分の子供たちを見ていると、喧嘩ばかりしてそんなことは全然ないんですが(笑)、その後、壊れてしまったそのゲームを直して、弟の引き籠もっている部屋の前にそっと置く。 弟を理解しようとしはじめた要の姿に胸が熱くなりました。
第7話「浮遊惑星のランデブー」
大学院時代に藤竹の依頼で、同期の相澤が模型を作る場面 人間の頭と身体って直結していて、ものを作ることによるリフレッシュの効果って絶対にあると思っているんです。 ふたりの恩師の伊之瀬先生の口癖も「手を動かす」ですし、実際、僕もコンピューターの前でデータ処理ばかりしていて疲れ切ったとき、野外に出て岩石を採ったり地層を測ったりすると、頭がスッキリして思考が深まるのをよく感じていました。 藤竹 「作ってくれよ、そういうの得意だろ?」 相澤 「そんなヒマないんだよ。自分でやれ」 藤竹 「俺はそんな器用じゃないよ」 相澤 「は?」 藤竹 「データばっかり睨んでないで、手を動かせ!」 僕も大学院時代は、それこそ「院生部屋」に1年中いたんですが、そこには先生は滅多に来なくて、先輩や同期といろんな話をしながら濃密な長い時間を過ごしました。 現在はJAXAで大きなプロジェクトを任されている相澤が、昔完成させた探査機の模型を今も自分の研究室に飾っていて、それを眺める場面もすごく意味深ですよね。 さて、本インタビューの時点で伊与原さんがドラマ『宙わたる教室』を視聴したのは第8話「メテオライトの憂鬱」まで。第9話、第10話で、さらに原作者や視聴者を泣かせる名場面が繰り広げられることを大いに期待したい!
文藝春秋出版部