中国が一人っ子政策をやめるのはなぜ?
中国政府は10月29日、1979年から実施してきた「一人っ子政策」の廃止を発表しました。中国共産党の中央委員会第5回全体会議(5中全会)が定める経済方針「第13次5カ年計画(2016~20年)」に盛り込まれ、来年3月の全国人民代表大会(全人代)で承認される見込みです。同政策が撤廃されれば、すべての夫婦に第2子の出産が認められるようになります。 これまで、一人っ子政策についてはさまざまな弊害が指摘されていましたが、なぜ中国は産児制限の緩和に踏み切ったのでしょうか? 制度の概要と問題点をおさらいしてみましょう。
「一人っ子政策」とは?
一人っ子政策は、人口抑制を目的に、夫婦の子どもを1人に制限する国策です。2人目からは罰金が科せられます。ただし、農村の一部や少数民族には例外的に2人目以降を産むことを認めていたほか、2014年からは 都市部でも夫婦のどちらかが一人っ子なら第2子まで出産できるなど、段階的に規制を緩めてきました。 しかし、国が夫婦の産む子どもの人数を義務化することは、国際社会からすれば人権侵害の価値観にあたり、非合法な仕組みとみなされていました。また、子どもが1人しか持てない制約下では家を継ぐ男児が望まれる傾向が強く、女児が生まれると出生届を出さなかったり、間引きしたり、養子に出したりする事例が少なくありませんでした。 そのため、男女の人口比率がアンバランスになったり、無戸籍の「黒孩子(ヘイハイズ)」が増加したりといった問題が顕在化しました。中国政府は、産児制限により出生率が低下し、余剰人口の抑制ができたと効果を訴えていましたが、同時に社会的な問題点を数多く生み出していたのです。
なぜ、一人っ子政策を廃止するの?
一人っ子政策廃止の背景には、経済成長の低下を食い止める狙いがあります。経済協力開発機構(OECD)が11月9日に発表した中国の国内総生産(GDP)の伸び率は、2015年の予想が6.8%、16年は6.5%、17年には6.2%に減速するとの見通しでした。 成長鈍化の要因の一つにあるのが、人口抑制が30年以上続いたことによる少子高齢化の加速です。中国統計局が13年に発表した12年の「生産年齢人口(15~59歳)」が、1949年の建国以来、初めて減少に転じました。また、人件費の高騰もあり、 安価を売りとした製造業の競争力低下が懸念されています。 中国の国家衛生計画出産委員会は、第2子を認めるようになれば、2050年までに労働人口が3400万人増えると試算。 労働力を回復させ、安定成長を見込んでいるのです。