エネルギー基本計画は「再エネ第一」に組み替えを。蓄電池と国産水素で、変動性再エネの弱点は克服できる
そうした柔軟性を機能させ、電力需給のバランスを促すシグナルとなるのが、電力市場の価格である。 再エネが増えて電力が余るタイミングで市場価格は下がる。小売価格を市場価格と一定程度相関して設定(リアルタイム・プライシングやTOU契約など)することによって、経済合理的に考える企業であれば、安価な時間帯に操業することで、電力コストを引き下げるだろう。 家庭も同じだ。屋根に付けた太陽光パネルで発電した電気を自家消費するか、備え付けの蓄電池やEVで充電するか、それとも売電するか、小売価格を見ながら最も得になるオプションを選択する。
こうして電力市場の価格変動に合わせ、供給側も需要側も自らが最も得になるよう柔軟に行動を変える結果、電力システム全体で需給バランスが保たれる。まるで、個々の楽団員が協調的に演奏して全体として美しいハーモニーを奏でる交響楽団のようだと、アメリカのロッキーマウンテン研究所のエイモリー・ロビンズ氏は述べている。 他方、第7次エネルギー基本計画の審議では、いまだに「ベースロード電源」の概念が喧伝され、 予見性・確実性をもたらす電源として24時間定格運転が可能な火力発電や原発が望ましいという意見表明がなされている。
だが、「ベースロード電源」という概念は国際的にはもはや死滅しつつあり、「柔軟性」に取って代わられている。それに伴って再エネの変動性や不確実性は、上記の幅広い対策によって十分対処可能なものと考えられている。重要なのは、供給側・需要側の両面で柔軟性を高めることにあり、再エネの変動性を吸収しうるよう、電力システムの力を高めることだ。解くべき課題の設定が変化しつつある点に気づいていないのは、日本だけかもしれない。
■カーボンニュートラルに向けた費用最小化の経路 次に、2050年に電力の脱炭素化を最小費用で実現する経路に関するシミュレーション結果を紹介しよう。下表に電源種別ごとの設備容量、発電電力量に占める割合(電源構成)、炭素強度、システムコスト、電力自給率等をまとめた。電力需要は電化率の上昇により、2050年までに2020年の1.5倍になると想定している。 結論の第1は、発電費用がもっとも安価な電源として太陽光と風力が選ばれ、主力電源になるということだ。2040年には両者合わせて発電電力量の58%、2050年には75%まで増加する。これらの割合が増加した結果、1日未満の短期の変動性に対処するため、蓄電池が2030年代から本格導入される。