石破首相発言で円キャリートレードが再び注目される
(ブルームバーグ): 8月の市場崩壊をあおった円中心のキャリートレードが石破茂首相の発言で投資家の関心を集めつつある。
トレーダーたちは円安を予想して投機的なポジションを再び積み増している。これは石破首相が政策金利の引き上げについて「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言したことに勇気付けられたためだ。RBCキャピタルマーケッツやみずほ証券などは、日本円が再び1ドル=150-155円の水準まで下落するリスクがあると見ており、ヘッジファンドが好むキャリートレードで、利回りの高い資産を買うために円を売る魅力が高まると考えている。
「復活した」とATFXグローバル・マーケッツのチーフ市場アナリスト、ニック・トウィデール氏(シドニー在勤)は語った。「新しい首相は今のところ円売りを推奨している」
石破氏の警告は、金融引き締め派と見られていた同氏を支持していた投資家を驚かせた。スワップトレーダーは2日、12月の日銀の利上げ確率を26%から22%程度に引き下げた。これにより世界で3番目に多く取引されている通貨を売るトレーダーに新たな弾みがついた。
またこの動きは日本が海外に保有する4兆4000億ドルの資産にも注目が集まることとなり、日銀の利上げペースの鈍化が国内への資本還流にどのような影響を与えるかという点にも注目が集まる。これらの投資は巨大なキャリートレードであるという意見もあるが、これらの保有資産はより長期にわたる傾向があり、投機的なポジションとは異なる。
短期的には4日に発表される米国の雇用統計が投資家にとって円相場の新たな手がかりとなる可能性がある。
「為替相場の方向性だけで判断すれば、円キャリートレードが再び活況を呈する可能性がある」とみずほ証券金融市場部の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは述べた。「日銀がハト派的な姿勢を示し、米国の経済指標が予想を上回り、中東情勢の緊迫化でドルが買われるようなことがあれば、ドル・円相場が155円になるリスクがある」としている。