令和の「劇場型政治」、主役は国民民主 立民を上回り「野党第一党の支持率」 2024政治回顧
令和の「劇場型政治」と言えるかもしれない。第1幕の主役は、先の衆院選で公示前から4倍の28議席に勢力を伸ばした国民民主党だ。玉木雄一郎代表(役職停止中)らはリアルとネットを融合させた活動を通じて若年層や現役世代の支持を集め、衆院で過半数を割った自民、公明両党や、財務省を「敵」に回し、政策実現に向けて戦った。 ■かつては「消滅危惧政党」 「国民の所得や手取りはそんなに増えていません。『国の懐(ふところ)』ばかりが豊かになってきたのです」 玉木氏は25日、自身のX(旧ツイッター)で、令和7年度予算案の税収が6年連続過去最高を更新すると指摘し、党の看板政策「年収103万円の壁」の引き上げについて税収面から正当化した。強気の玉木氏だが、国民民主はかつて「消滅危惧政党」と揶揄(やゆ)されていた。 令和2年9月にわずか15人の衆参議員と4人の党職員で立ち上げた結党大会。玉木氏は「国民の役に立つ具体的な政策提案を絞り出す」と訴えた。しかし党の支持率は1~2%台でさまよい続けてきた。 局面が変わったのは10月の衆院選だ。SNSでの発信に力を入れ、若年層や現役世代に向けた政策に軸足を置いた。結果は小選挙区で11議席、比例代表で17議席を獲得。特に比例票は約617万票で前回の3年衆院選から約358万票も伸びた。7万2000票の増加にとどまった立憲民主党とは対照的だ。 投開票日当日、玉木氏は「本当によく踏ん張ったと思う。これからは何でもありだ」と興奮気味に語っていた。今や報道機関の世論調査で立民を上回る「野党第一党の支持率」を得るまでになった。 ■「国民の敵」と戦う姿に賞賛 衆院で過半数を持たない石破茂政権が令和7年度予算案や法案を成立させるためには、野党の協力が不可欠となる。自民に対抗し得る野党が存在しない「1強多弱」の時代は終焉(しゅうえん)した。 103万円の壁を巡る自公国の攻防で、国民民主は控除額を178万円まで引き上げるよう求めたが、与党の7年度税制改正大綱では123万円にとどまった。SNSでは政府・与党への批判が噴出。自民の宮沢洋一税調会長は「ラスボス(最後の敵)」に見立てられ、「国民の敵」と位置付けられた自民と戦う国民民主に称賛が送られている。 自公国の協議は来年に持ち越されることになった。国民民主幹部は来夏の参院選もにらみつつ、与党から満足できる回答が得られなければ、「有権者に問えばいい」と言い放つ。平成17年に当時の小泉純一郎首相が郵政民営化に反対する自民議員を「抵抗勢力」として敵に回し、世論の支持を受けて政策を進めた「小泉劇場」さながらだ。
与党は野党分断の思惑含みで日本維新の会とも教育無償化に向けた協議を始めた。政権交代を目指す立民も立ち位置が問われ、来年の通常国会会期末での内閣不信任決議案提出を巡る決断が最大の焦点となる。夏の決戦に向けた攻防は新たな政治劇を生みそうだ。(野党キャップ 千田恒弥)