<感恩報謝・’22センバツ星稜>/5止 思い2年分、団結の“春” /石川
「この日を皆さんも待ちわびていたと思います。おめでとう。頑張ってください」 1月28日、星稜高の室内練習場で鍋谷正二校長からセンバツ出場決定を告げられると、集まった部員たちは夢舞台への喜びをかみしめた。佐々木優太主将(2年)は「うれしい気持ちでいっぱい。石川県に優勝旗を持って帰れるように頑張りたい」と意気込んだ。 コロナ禍の影響で思うように練習が積めない中、選手たちは秋の大会を勝ち抜いていく中で力を付け、チームとしてまとまっていった。林和成監督は北信越大会1回戦でサヨナラ打を放つなど勝負強い打撃が光った荒木陽翔選手(2年)や、準決勝で3安打、決勝で2安打を放った津沢泰成選手(2年)らを挙げて、「期待以上の活躍を見せてくれた選手が何人もいた」とその成長を評価する。 選出されながらも大会中止に泣いた2020年のセンバツや、複数の部員が新型コロナウイルスに感染して大会途中で辞退を余儀なくされた昨夏の石川大会などコロナ禍で涙をのんだ上級生たちの思いを背負うことで、選手たちは自らを奮い立たせてきた。一方で、佐々木主将は北信越大会前に3年生から「俺たちのことはあまり考えずに楽に行けよ」と声を掛けられたという。センバツ出場をかけた大事な大会前に気負い過ぎないよう後輩を気遣っての言葉だった。それでも「やっぱり試合前は『3年生の分も』となります」と佐々木主将は笑う。 北信越大会で準優勝を果たし、センバツ出場を大きくたぐり寄せた選手たちは、甲子園に向け上級生やセンバツを最後に退任する林監督をはじめ、支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを野球で表現しようと「感恩報謝」をチームのスローガンに掲げた。 センバツ決定で佐々木主将は改めてこう誓った。「僕たちの代は2学年分の先輩方の思いを背負っている。センバツで自分たちが輝いている姿を見せて恩返しをしたい」 × × 「このチームにずば抜けた選手はいない。でも団結力がある。それが強みだと思う」。チームの特徴について話す選手たちの言葉には秋の大会で思いを一つに接戦を勝ち抜いてきた自信があふれている。北陸特有の荒天で屋外での練習が制限される中、選手たちは屋内練習場で筋力トレーニングや守備練習といった基礎固めに黙々と取り組んできた。林監督は「選手たちは例年以上にやってくれている。さらに力を上積みして本番に合わせていきたい」と話す。2月に入ってグラウンドでバットを振るなど練習内容も充実してきた。 さまざまな人々の思いを胸に一つにまとまり、成長を遂げてきた選手たち。そんな彼らが心待ちにするセンバツの開幕は、あと1カ月後に迫っている。=おわり(この企画は深尾昭寛が担当しました)