<春に輝け・常総学院の挑戦2021>「仲良しクラブ」を変える チームに集中力、緊張感 個々を鼓舞、主将が率先 /茨城
全体練習の開始直前、準備を終えた選手たちが、グラウンドで大きな円を作った。主将の田辺広大(こうた)(2年)が「黙想」とかけ声をかけると、選手たちが目を閉じる。30秒後、「やめ」の合図で目を開けると、選手たちのまなざしは強く変わっていた。 黙想を始めたのは田辺のアイデアだ。懸念していたのは、2年生部員の仲の良さ。それは長所であり短所でもあった。「ミスしても笑って何も言わない、『仲良しクラブ』だった」。野球に集中するため、意識を切り替えるにはどうすればいいか。2020年夏に主将に就任し、思いついたのが黙想だった。 だが、緩んだ雰囲気はすぐには変わらなかった。当初は円になっても、くすくす笑いが起き、緊張感とはほど遠い状況。ようやく意識が変わり始めたのは、フライアウト18で途中敗退した県南地区選抜大会以降のことだ。 「自分が主将になって、チームを変えて甲子園に行ってやる」。それが、入部以来の田辺の思いだった。ここ数年、チームが甲子園から遠ざかっていることは認識しながらも、流れを変えたかった。主将選出とほぼ同時に島田直也監督が就任すると、「監督の言うことを信じてついていく」と心に決めた。島田監督の意図を言葉や表情からくみ取り、選手たちに伝えること。それが自らに課した役割だ。 島田監督の教えはシンプルだ。「当たり前のことを当たり前にできるように」「練習はとにかく必死に。誰かが見てくれている」「全員にチャンスを与える」――。田辺も常に意識し、選手たちに振り返らせてきた。かれた声で「『慣れ』(の状態)になっちゃだめだ」などと強調する田辺の前で、選手たちが野球ノートに要点をメモする様子は日常風景。「どんどんアピールしていかないと」と個々を鼓舞するのも大事な役目だ。 島田監督は「やる、やらないは選手の気持ち次第。しっかりやったから結果につながった」と振り返る。チームの集中力は、発足時と段違いに向上した。それでも、田辺は「全国で優勝するのは甘くない。一人一人が自分で考えて、もっと必死に練習しないと」と強調する。大舞台に向け、日々の緊張感は高まっている。【長屋美乃里】 ◇ 34年前の春、エースとして野球部を初の甲子園に導き、プロでも活躍した島田新監督の指揮のもと、今春のセンバツに向け日々研さんを積む常総学院の選手たち。ナインとあたたかく見守る人々の日々を随時掲載する。