「ディープステート」「EV義務化終わらせる」…トランプ氏が大統領の権限強化か
【ワシントン=田島大志】ホワイトハウス奪還を確実にした米共和党のトランプ前大統領は、選挙戦で「米国を再び偉大に」を合言葉に「強い米国」の復活を掲げてきた。大統領の権限を強め、強権的な政権運営に走るとの見方が出ている。 【写真】米フロリダ州で6日、支持者の前で演説するトランプ氏
トランプ氏は政権復帰後、移民が流入するメキシコ国境の管理を強化するほか、石油掘削許可の拡大でエネルギー政策の転換を図る構えだ。7月の党大会の指名受諾演説では「就任初日に電気自動車(EV)の義務化を終わらせる」と訴えた。
第1次政権(2017~21年)では、政治経験豊富なマイク・ペンス副大統領が政権内の調整役を担った。初期には退役海兵隊大将のジョン・ケリー氏らが首席補佐官などで脇を固め、時にはトランプ氏に苦言を呈することもあった。
しかし、新政権はトランプ氏の意向に忠実な人材だけを集めるとみられ、独善的な政権運営に陥るリスクが指摘される。民主党のハリス副大統領は選挙戦で、トランプ氏を「ファシスト」と非難した。「側近らは誰も抑制できない」と指摘し、返り咲けば独裁的な政権運営になると警告した。
副大統領となるJ・D・バンス上院議員は初当選から2年と政治経験が浅く、力量は未知数だ。政権内はトランプ氏の顔色をうかがう側近ばかりになる恐れがある。
トランプ氏は、政界や経済界のエリートが結託した「ディープステート(闇の政府)」が連邦捜査局(FBI)や政府機関を操っているといった陰謀論を今回の選挙戦でも唱えた。「完全に屈服させる」と訴え、報復を宣言してきた。
トランプ氏は自らが起訴されたことで、バイデン政権の司法省が「司法を武器化している」として批判してきた。自らの信奉者を政治任用で政府高官として起用し、逆襲に出るとみられている。