90歳の「おばー」が一人暮らしでも笑顔を絶やさないワケ
沖縄本島の最北端、山原(やんばる)の森の中にある国頭村に住む大田吉子さんは、現在90歳。5年前、孫の浩之さんから「TikTokっちゅうものを一緒にやらんかね」と誘われたことがきっかけで、TikTokerに。 【画像を見る】マンガ『親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話』を読む 吉子さんが好き勝手におしゃべりしたり、歌やモノマネを披露したり、海や山で遊んだりしている様子を撮影した動画や写真が人気を集め、現在では50万人を超えるフォロワーがいます。 動画ではいつも天真爛漫、笑顔と元気一杯の吉子さんですが、戦中・戦後の厳しい時代を生き抜いてきた1人でもあります。 沖縄戦が始まったのは、吉子さんが10歳のとき。3ヶ月間山中で潜んで暮らし、終戦後は村の人々と助け合い、食べ物を分け合いながら生き延びました。 家計を助けるために高校時代には幼稚園で保育士をし、卒業後はバスガイドに。アメリカ軍基地の中にあるラジオ局で電話交換手の仕事もしました。22歳で結婚した後は、夫婦でアイスキャンディー店、精肉店、鮮魚店、農業、畜産業、民泊を営み、ずっと働きづめだったといいます。 「でも、私は戦争や貧しい生活の中でもずいぶん幸せに生きてきました。幸せっちゅうのは、心の持ちようひとつ。一生懸命に働いて5人の息子全員を大学まで出すことができたのは、夫と私の誇りです」と吉子さんは振り返ります。 ■SNSで世界中の人を「笑顔」にするのが「夢」 吉子さんは1年前に夫を老衰で亡くし、現在は自宅でひとり暮らしをしています。いまの生きがいは、TikTokやYouTubeで笑顔を届けること。「世界中のみんなに笑顔で1日を過ごしてもらうこと」が、人生の目標だといいます。 そう考えるようになったきっかけが、コロナ禍でした。コロナ禍で外出や人との接触が制限されていた時期、吉子さんは戦争以来久々に「寂しい」という気持ちを思い出したといいます。 「この世界のどこかに『寂しい』という気持ちを抱えている人がいたら、おばーの動画やら写真やらをインターネットで見て、一瞬でもそれを忘れてもらいたい。おばーが大声で笑ったり楽しそうに遊んだりしている姿を見てくれた人たちが、元気が出て明るくなってくれたら最高です」と吉子さんは語ります。 そんな「みんなに元気や笑顔を届けたい」という気持ちが、吉子さん自身にとっても元気の源であり、健康長寿の秘訣になっているのかもしれませんね。 文=城川佳子 【著者プロフィール】 大田吉子 1934年沖縄生まれ。沖縄本島最北端の国頭村で暮らす。22歳で結婚し、自営の鮮魚・精肉店や農業、畜産業、民泊など多くの仕事をこなしてきた。2023年に夫を亡くして以来ひとり暮らし。子どもは5人、孫10人、ひ孫14人。孫の浩之さんが撮影するTikTok「南の島のおばーと孫」が大人気に。SNSの総フォロワー数は50万人を超える。