「ロマンス詐欺で失ったカネが返ってくる」もサギだった…連発する弁護士犯罪「意外な黒幕」の正体
「黒幕」の正体
ということは事件の本質は弁護士法違反の非弁提携ではなく、騙しのテクニックを持った連中による詐欺事件ということだ。実際、警視庁は今野容疑者の発表のなかで、逮捕した10人の事務所スタッフのなかに特殊詐欺グループに属している人間がいることを示唆した。 振り込め詐欺を中心とした特殊詐欺は、かつて暴力団が背後にいる反社会的勢力が一般的だったが、暴力団の衰退に会わせ、ネットで結びつき犯罪の種類によってグループを形成するトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)が主流になってきた。 8つの強盗事件で指示役として摘発された「ルフィ」グループ事件がその代表。ルフィこと今村麿人被告は、フィルピンの収容所から匿名性の高い通信アプリで国内の実行犯らを操っていた。国際ロマンス詐欺被害者の着手金詐欺事件もまた、単独のスポンサー的黒幕か、グループ犯的黒幕かは別にして、弁護士の後ろには資金とノウハウを持つ黒幕がいて、彼らには捜査が及んでいない。 竹原事件では、会社役員、自営業者、事務所従業員の3人が逮捕され公判を迎えたが、「その背後には特殊詐欺の黒幕として知られるOの存在が指摘されているものの、Oに行き着くには幾つもの指示役を辿らねばならず、今回も行き着けなかった」(特殊詐欺事情に詳しい関係者)という。 それだけ複雑であり、懲役2年以下の弁護士法違反事件ではなく、黒幕をターゲットにした組織的な懲役10年以下の詐欺事件としての立件を求められている。
詐欺に遭わない方法
ただ、着手金狙いの弁護士、あるいは弁護士事務所の見分け方については、東京弁護士会、あるいは今野容疑者が所属した埼玉弁護士会のホームページに詳しく書いている。理解できなかったとしても詐欺に遭わない方法はシンプルだ。 前出の藤原弁護士が説明する。 「そもそも国際ロマンス詐欺の被害金額を取り戻すことが無理、という立場に立つのが普通の弁護士です。もし受任するにしても、被害回復は困難でも民事刑事上、尽くせる手段はすべて尽しますと依頼者に説明し、その上で依頼するか否かを決めてもらうしかありません」 ただ、被害者続出、事件化頻発の現段階では、受任できる環境にない。受任すれば着手金詐欺と言われかねない。それが現在、受任を断わっている理由だという。 国際ロマンス詐欺という呼称はともかく、「色」と「欲」に絡めてバーチャルなネット空間で行われる犯罪が止むことはない。そして詐欺被害の救済は弁護士の仕事である。それは変わらないだけに、弁護士の信頼回復と捜査当局の摘発を通じた詐欺環境の改善が、早急に求められている。
伊藤 博敏(ジャーナリスト)