「ロマンス詐欺で失ったカネが返ってくる」もサギだった…連発する弁護士犯罪「意外な黒幕」の正体
増える「弁護士犯罪」
「詐欺被害を回収します」と謳いながら着手金だけ受け取って何もしない弁護士事件が多発している。 【写真】スニーカーショップ「アトモス」創業者が数十億を荒稼ぎした「横領の手口」 警視庁捜査2課は、6月13日、弁護士で元衆議院議員の今野智博容疑者(48)を、弁護士法違反(非弁提携)容疑で逮捕したと発表した。事務所スタッフの男女10人も同容疑で逮捕。非弁提携のこの事務所は、昨年9月から今年3月までの約半年間に、着手金名目で約900人から約5億円を集めていたという。 今野容疑者は、比例北関東ブロックで当選2回(12年12月~17年9月)の元代議士だけに大きく報道されたが、「詐欺被害未回収事件」とでも呼ぶべき弁護士犯罪に関する報道がこのところ多い。 弁護士名義を使わせて国際ロマンス詐欺の被害金回収業務をさせたとして弁護士法違反に問われたRMC法律事務所の代表弁護士、竹原孝雄被告(82)らの初公判が5月8日に大阪地裁であり、竹原被告と共犯者らはいずれも起訴事実を認めた。 5月29日には、大坂地検特捜部が国際ロマンス詐欺の被害回復をうたって広告会社に名義を貸して法律事務をさせたとして、弁護士の川口正輝容疑者(38)と広告会社の役員ら4人を逮捕した。
なぜ国際ロマンス詐欺に引っかかるのか
今野容疑者が警視庁で川口容疑者が大坂地検特捜部。竹原被告を摘発したのが大阪府警なので、詐欺被害未回収事件が全国的な拡がりを持ち、捜査当局が揃って関心を示していることがわかる。 加えて、着手金名目だけに被害金額は数十万円。回収を諦めて泣き寝入りする被害者が多く、事件化は氷山の一角だ。証明するように弁護士への恨みを晴らそうとする懲戒審査請求が少なくない。第一東京弁護士会綱紀委員会は、5月1日、国際ロマンス詐欺の被害回復を求める依頼者の対応を事務員に任せ、自身は依頼者対応をしなかったとして横山晃崇弁護士(54)と事務所を同会懲戒委員会に審査請求したと発表した。 ただ個々の報道だけでは、一連の事件が抱える社会的病理が浮かび上がってこない。 SNSで知り合った異性に恋愛感情を抱かせて金銭を振り込ませるのが国際ロマンス詐欺だが、「会ったこともない相手を信用して振り込む行為が信じられないし、その救済を訴えて着手金を詐欺する弁護士がいるのも信じられない」というのが一般的な反応ではないだろうか。 つまり、「自分には関わりのない事件」である。だが、振り込め詐欺が生活状況や精神状態を把握したうえで、あらゆるパターンを用意し、心配させ恐怖を煽って従わせるように、国際ロマンス詐欺にも引っ掛かってしまうだけの周到な仕掛けがある。