最後は土に返し〝循環〟 アイヌ装い通じ、文化伝える 三重・松阪の武四郎記念館
北海道の国立アイヌ民族博物館員が講演
三重県松阪市小野江町の松浦武四郎記念館(山本命館長)は8日午前10時から同館で、国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長、北海道白老町)教育普及室室長補佐の北嶋由紀さん(51)による「アイヌの装い」と題した講演会を開いた。市民ら50人以上が聴講しアイヌの伝統的な衣服を通じて北の大地で自然とともに生きた人たちの考えや姿勢に触れた。 北海道の名付け親として知られる武四郎が三重県と北海道の縁を結ぶ形で両館共催で開催中の展示「三重から北海道へ―アイヌ文化と出会った人々」(1月19日まで)に合わせて開いた。北嶋さんは同館で、アイヌ民族の衣服作りを中心とする生活技術の文化伝承を担当している。 この日、北嶋さんは松阪木綿を使った自作の衣装を着て登壇。文化伝承について「先祖代々引き継がれるものが一般的だが、私の場合、講習会で講師から手ほどきを受けて身に付けるものだった」と切り出し、「アイヌの衣服の素晴らしさに開眼して以来、アイヌ刺しゅうを学ぶ過程で多くの師に出会った」と続けた。 その上で、アイヌ女性に受け継がれた衣服文化の研究に専念したという津田命子さんを挙げて「刺しゅうだけではなくアイヌ文化全般についていろいろ教えてくださった。その教えには『自然から頂いた材料は大切にしなさい。大切に使った後は土に返しなさい。ものは循環している』などがあった」と述べた。さらに「文化伝承者には家族で代々受け継ぐものと、私のようにいわば外部の人が直接権威のある人から指導してもらえるケースもあると知ってほしい」とした。 また、アイヌの衣服の素材が動物の皮や植物の繊維、草皮に由来していることやその特徴を実物を示して解説した。 山本館長(48)は「伝統技法はどのようにして受け継がれていくのか。このことは本州に住む私たちにとっても重要な問題。翻って、私たちは伝統文化をどのように伝承していかねばならないか。改めて考える機会になったのでは」と締めくくった。