萩原利久にとっての“信頼”とは「自分の言葉で話すこと」
5年のブランクが生んだ、杉咲花とのコミュニケーション
杉咲との共演は、映画『十二人の死にたい子どもたち』(2019)から5年ぶり。あらためて役者・杉咲花への印象を言葉にしてもらうと「やっぱり僕らの世代のなかでは、飛び抜けている方」と返ってくる。 「『十二人の死にたい子どもたち』が終わったあとも、杉咲さんともう一回ご一緒したいなと思っていました。杉咲さんが当時演じていたアンリという役柄の影響もあって、同世代が集まる現場にも関わらず、あえてコミュニケーションを遮断されていた部分があったと思うんです。そういった自立されている面にも影響を受けました。共演としては二度目ですが、僕としては5年経ったいま、あらためて初共演した感覚ですね」 当時とは違い、今回はバディ役。現場でのコミュニケーションは「撮影の合間に、なんでもない世間話」をたくさんしたという。それが泉と礒川の雰囲気に影響を与えたのかもしれない、と萩原は述懐する。 「昨日食べたものとか、目の前に映ったものについてとか、他愛ない雑談です。初日に撮ったシーンが、たしか礒川と泉の二人で車中にいるところで。いきなり閉鎖された空間に残されたら、話すしかなくなるじゃないですか(笑)。それこそ『十二人の死にたい子どもたち』の思い出とか、本編には関係ない話を、たくさん。それが、言葉には表れない二人の空気感や会話のテンポに出ていたらいいな、と思います」
発言は、100%説明がつく状態で
事実と虚構。本音と建前。誰がどれだけ本当のことを口にしているのか、すぐに図りきれなくなったのは、インターネットやSNSの台頭も関係しているのかもしれない。子役時代からキャリアを積んできた萩原も、SNSやインタビューで発する言葉には気を払っているという。 「言葉を扱う仕事だからこそ、より気をつけている面はあります。言葉って残るものだし、受け手に与える力が強いものじゃないですか。この言葉を使うことで、受け取った側がどう感じるかを想像しています」 事実は一つでも、捉える側によって見え方は幾重にも変わる。そんな多視点の本作を経験した影響もあるが、過去に出演したドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(2019)も大きなきっかけになった。 「言葉には力があることを自覚して、発する言葉に責任を持つこと。このテーマに、全話をかけて真っ向からぶつかった作品でした。言葉を発する側よりも受ける側のほうが、より影響を受けるものだし。だから、ちゃんと自分で考えた言葉を使うことを意識しています。どれだけ気をつけていても、すべての意図をそのまま伝えるのは難しい。だからこそ、使った言葉は100%、自分で説明ができる状態にしておきたいんです」 その反面、趣味に関しては、あんまり考えてないかもしれません……と続ける萩原。彼には多くの趣味があるが、なかでも自他ともに認めるNBAゴールデンステート・ウォリアーズのファン。とくにステフィン・カリー選手のファン。冠バラエティ番組『萩原利久のwkwkはぎわランド』(フジテレビ系列)内でも、生で試合を観戦するために現地に飛んだ様子が放送されたばかりだ。 「趣味についてのSNS投稿は、もう『好きだからやってる!』に尽きるんですけど、楽しんで見てもらえている人がいるなら嬉しいです。僕をきっかけにウォリアーズやカリー選手のことを知ってくれたら、よけいに嬉しい。趣味の投稿に関しては、ただ興奮してるだけのときも……」 ドラマ・劇場版『美しい彼』シリーズで、ますます役者としての認知度を高めた萩原。2023年には冠バラエティ番組がスタートし、役者とは違った顔を見せる機会も増えた。チームで仕事をするうえで、信頼関係を構築するために意識していることはあるのだろうか。 「カメラに映ってないところでも、よく喋っている気がしますね。それこそ『今週のONE PIECE読んだ?』とか世間話ですけど。wkwkはぎわランドに関しては、僕単体の素の部分が出るものだし、僕自身バラエティに不慣れだし、よりスタッフ皆さんの力があってこそ成り立っているものなんです。協力し合って良い番組がつくれたらいいな、と思っているので、なんでもないことでも話すようにしてますね」 自然体。ありきたりだが、そんな言葉が浮かぶ。力が入ってないように見えて、きっと誰よりも細部に気をかけている。そんな彼だからこそ、信頼され、周りに人が絶えないのだろう。 取材・文:北村有 <作品情報> 『朽ちないサクラ』 6月21日(金) より全国公開 (C)2024 映画「朽ちないサクラ」製作委員会