奄美の復帰運動を次世代へ 当時の写真交え講演 楠田哲久さん
鹿児島県立奄美図書館の生涯学習講座「あまみならでは学舎」の2024年度第4回が31日、奄美市名瀬の同館研修室であった。泉芳朗先生を偲(しの)ぶ会代表の楠田哲久さん(77)が「奄美群島日本復帰運動に学ぶ」と題し、米軍政下にあった奄美群島の復帰運動について講演。14歳以上の群島民99・8%(約14万人)が名を連ねた復帰請願署名録や、米国ダレス国務長官が奄美返還を発表した「ダレス声明」の翌日に声明に感謝する郡民大会の様子などが納められた100枚以上の写真を紹介し「血を流すことなく成し遂げた世界に誇ることのできる運動。次世代につないでいく努力をしなければならない」と呼び掛けた。 楠田さんは父の故豊春氏が復帰運動をけん引した泉芳朗の側近。生前運動の伝承に取り組んでいた豊春氏によく同行し自身も活動を始めた。復帰から70周年を迎えた昨年度には奄美群島内で26回講演したという。 講演ではダレス声明発表の約2カ月前にルーズベルト大統領(当時退任後)の妻で国連人権委員会の委員長を務めたエレノア・ルーズベルト氏に福岡で陳情した奄美婦人連合会長の基八重子さんの写真や、声明発表直前の53年7月25日に東京であった奄美大島日本復帰対策全国代表者大会に寄せた吉田茂首相(当時)のメッセージなども紹介。「この問題は若干の時日を要することと予想されますが、私たちはいささかなりとも心くじけることなく誠意と熱情とをもってこれが解決を図りたい」などと記載されていたという。 講演には市民ら60人余りが参加。奄美市名瀬の久保薗利秀さん(55)は「先人たちは大変な苦労をされたと思う。映像も含めて貴重な資料を見ることができてよかった」と話した。