みんなのためのラジオを放送し続ける杉作J太郎。彼がラジオに込める「誰も切り捨てないこだわり」
2017年から故郷の愛媛県で帯番組のディスクジョッキーを務めている杉作J太郎が、執筆に10年かけたという新著『あーしはDJ』。本人が「作家人生の集大成」と語る渾身の一冊について、ラジオにかける思いについて、はたまた自身の恋愛観について熱く語ってもらった! 【書影】『あーしはDJ』イースト・プレス * * * ――以前のインタビューで、「20歳のとき、病気で入院したときの唯一の楽しみがラジオだった」とおっしゃっています。 杉作 そうでした。テレビはコア視聴率が大事だから、購買力のある人、つまり仕事をしている健康的な人に向けたものになっていました。 そのため、弱っているときに見ると「俺が死のうが生きようが世の中は動くんだな」って絶望的な気持ちになるんです。その一方で、ラジオは弱っている人にしゃべりかけてくれるメディアなんですよね。 ――実際、私も数年前に手術をしてへこんでいたのですが、その時期にすがっていたのが杉作さんのラジオなんです。 杉作 本当ですか! ただ、僕は「皆のためにラジオをやってる」なんて言いながら、その"皆"には僕自身も含まれていますから。基本的に僕は常に信じられないぐらい孤独でうまくいってないので(笑)。 そういう弱っている人たちが聴いてイヤになる放送は絶対したくないんです。中には「俺の話を聞けば流行がわかる」みたいな、どれほど自分に価値があるかアピールしたくてしゃべる人もいるように思うんです。 その点、僕は「俺がどれぐらい絶望の淵にいるのかを教えてやる」ぐらいに思っていますから。 ――ところで、『杉作J太郎のどっきりナイト』だった番組タイトルが、21年から『ファニーナイト』に変わった理由を教えてください。 杉作 大きな地震が起きた日の夜にラジオがあったんですが、地震当日に『どっきりナイト』という番組名は言いにくかった。 程度の差こそあれ、災害ってしょっちゅうあるわけだから、『どっきりナイト』は厳しいということで番組名を変えました。 被害が出ている日に『どっきりナイト』なんて言ったら、被災者の方々は「杉作の視界に私たちは入っていないんだな」「自分は切り捨てられている」と思うはず。僕ね、「切り捨てる」っていうのが一番イヤなんです。 番組のリスナーには恋人のいない人も相当います。だから、メールで「今日は彼女とデートして、キスって気持ちのいいものなんですよ」とか......まあ、そんなの送ってくる人はめったにいませんけど(笑)、そういう投書はやっぱり読めないですよ。だって、ひとりでラジオを聴いている人たちがどれほどショックを受けるか......。 ――杉作さんはTikTokもスタートされましたが、投稿している食べ物も「いいものは載せないようにしよう」と意識されているんですか? 杉作 どっちみちいいものを食べてないので、結果的にそうなってるだけです(笑)。でも、いいものを食べても載せないでしょうね。あと、僕がすてきな女性と食事したとしても、その女性の存在は隠すと思います。 昔、菅原文太さんが写真週刊誌に激怒したことがありましてね。別にスキャンダラスな写真が掲載されたわけではなく、文太さんが家族と食事したり遊んでいる私生活の写真が載っていた。その記事に、文太さんがまあ激怒したんです。 その頃の文太さんは『トラック野郎』や『仁義なき戦い』に出演する東映の俳優でした。「東映の映画館に来ているのは、家庭もなければ奥さんも子供もいない人ばっかりなんだよ。俺はその人たちを裏切りたくないんだ」と。本当は家族との生活もあるけれど、それを皆に見せてがっかりさせたくない。 例えば、アイドルも彼氏や好きな人はいると思うんです。でも、あえて見せないじゃないですか。プロとしての最低限のマナーだと思うんです。