みんなのためのラジオを放送し続ける杉作J太郎。彼がラジオに込める「誰も切り捨てないこだわり」
――昔、モーニング娘。のファンが「○○って処女だよな?」「おおー!」と盛り上がっている姿を見て「なんてピュアなやつらなんだ!」と杉作さんが感動したという話がありました。 杉作 だから、元アイドルの方が「当時から彼氏がいたんです」と言ったとしても、僕は恋人はいないと言っていたその方に「本当にありがとうございました!」って言うと思います。 ――話は変わりますが、今作を読むとやはり(『新世紀エヴァンゲリオン』の)「綾波レイ」が重要な存在だなと思いました。今、ラジオに出ている杉作さんは以前に比べて優しさがより強く表に出ている印象を受けるのですが、その理由に「綾波さんみたいになりたい」という思いがあるのかなと感じました。 杉作 たぶん、あると思います。綾波さんのような慈愛に満ちた女性に接したとき、僕は感動するんです。そして「うわぁ、すてきだな」という感動を繰り返しているうちに「なれないだろうけど、自分もそうならなきゃいけない」と思っている。 ――本の中の「綾波さんは俺なのだ」という一節は特に響きました。理想とする人が自分の中にあり、綾波レイという女性にその理想を投影している。つまり、「俺がなりたいのは綾波さんのような人である」と。 杉作 そうなんですよ! 好きな人の言ってることって自分に吸収されますよね? イヤな上司がガミガミ言ったことは入ってこなくても、好きな女性が言う言葉だと「ああ、そのとおりだな」って素直に聞ける。 ある女性を一生懸命愛し続ければ、振り向いてもらえなくてもその女性の長所が自分の中に入ってくる。片思いって、すればするほど間違いなく人間は向上していくと思う。だから、片思いは無駄にならないんですよ。 その対象はアイドルだっていいんです。例えば、篠崎愛さんの写真集を手に入れられない人が隣町、そのまた隣の町、ものすごい遠い町まで行ったらようやく見つかった。 もし、その彼にむしゃくしゃしたことがあったとしても、そんなに無駄な時間を過ごしたらそれどころじゃないくらいケツに火がついてるはずです! それと同時に、すてきな篠崎愛さんのきれいなグラビアが手に入ったことによる満足感があるはずですから。だから、好きな人が与えてくれるものを求めていかないと。 とにかく、片思いを推進していきたいですね。そういう意味でも『週刊プレイボーイ』はいい本だと思います。こんな片思い大全集みたいな本はないからね! ■杉作J太郎(すぎさく・じぇいたろう) 1961年生まれ、愛媛県出身。詩人、ラジオDJ、漫画家、狼の墓場プロダクション局長(映画製作)。82年、『笑ってる場合ですよ』(フジテレビ)のお笑い新人オーディションに合格。同年、『月刊漫画ガロ』で漫画連載開始。86年から『週刊平凡パンチ』で編集者に。放送作家、映画俳優、プロレス解説者などを経て、2017年、故郷の松山市に帰り、ほぼ毎日、『杉作J太郎のファニーナイトHUG』(南海放送。番組タイトルはもろもろ変遷あり)のDJを担当している ■『あーしはDJ』イースト・プレス 1980円(税込) 四国・松山からほぼ毎夜オンエアされているラジオ番組『杉作J太郎のファニーナイトHUG』(南海放送)でDJを務める杉作J太郎が10年かけて書き上げた渾身作。基本的に日記形式になっており、ラジオ番組が一晩続く形で話が続いていく"読むラジオ番組"。「あーし」(性差を超えた一人称)=J太郎が、落ち込んだり、うれしくなったり、死にかけたりしながら、孤独や慈愛とどう対峙するかをつづった。声に出して笑ってしまう箇所、多し! 取材・文/寺西ジャジューカ 撮影/関根弘康