加齢とともに男性は低下、女性は上昇。「悪玉コレステロール」は気にする必要なし?
実はコレステロールは怖くない?
ですから本来は遊離コレステロールの量と、その回収能力が分かれば、動脈硬化リスクを評価することができるはずです。しかしその測定が困難なため、代わりにもっと測定しやすい、LDL粒子とHDL粒子に含まれるコレステロール量で代用しているのです。 うんと単純に言えば、LDLコレステロールとは、肝臓から全身に供給されるコレステロール、HDLコレステロールとは全身から回収された余分なコレステロールということになります。 しかしそれでは予防という観点でインパクトがないので、「悪玉」「善玉」と呼ぶことにしたのです。誰が考えたか分かりませんが、うまいネーミングだと思います。 日本人間ドック学会が出している基準値(基準範囲)は次のようになっています。 LDLコレステロールについて、男性の平均値は60代前半まで、基準範囲を超えています。しかしその後は下がって、基準範囲に収まっています。反対に女性では、40代までは基準範囲内ですが、50代に入ってから基準範囲を超え、70代に入ってもあまり下がってきません。
年齢、性別とコレステロール
また分布を見ると、男性で基準範囲以下のひとは、40代でわずか4割、70代前半でも5割ちょっとであることが分かります。女性では40代で6割前後が基準以下ですが、50代以降は4割程度に減っています。 つまりLDLコレステロールについては、男性は加齢とともに低下する傾向があり、逆に女性は上昇する傾向があると言えます。 ただ基準範囲を超えるひとの割合が、男女とも4割から6割もいるわけで、健診で「*」が付いたからといって、さほど心配する必要はなさそうだ、ということが言えると思います。 HDLコレステロールについては、男女とも優秀で、9割以上のひとが基準範囲以上になっています。平均値では、女性のほうが圧倒的に良い数字になっています。LDLコレステロールが高い分を、補っているといってよさそうです。 『基準範囲内でも動脈硬化のリスクが…「総コレステロール値」は数値ではなく「ココ」を見よ! 』へ続く
永田 宏(長浜バイオ大学バイオデータサイエンス学科教授)