「脳卒中」の初期症状・原因はご存じですか? 脳卒中の疑いで倒れたときの正しい対処法も医師が解説
脳卒中の初期症状
編集部: 脳卒中を発症すると、どのような症状が表れるのですか? 清水先生: 一般に、脳卒中を発症すると以下の症状が突然起きるとされています。 ・片方の手足・顔半分の麻痺・しびれが起こる(手足のみ、顔のみの場合もある) ・呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない ・力はあるのにバランスが取れなくて立てない、歩けない、フラフラする ・片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける ・経験したことのない激しい頭痛がする 編集部: 様々な症状があるのですね。 清水先生: ただし、細かく言えば、障害された脳の部位によって症状が異なります。脳梗塞と脳出血は症状がよく似ていますが、くも膜下出血の場合には突然、激しい頭痛が起きることが最大の特徴です。 編集部: 頭痛が激しい場合は、くも膜下出血が疑われるのですね。 清水先生: 「バットで殴られたような」と表現されることもあるような激しい頭痛が突然、起こります。多くが吐き気や嘔吐を伴い、意識が朦朧としたり、意識を失ったりすることもあります。 編集部: 発症する前に前兆はあるのですか? 清水先生: 多くの場合、前兆はありません。ただし、一部の脳梗塞では、同様の症状が一時的に表れることがあります。これを「一過性脳虚血発作(TIA)」と言い、発症後に脳梗塞を引き起こす可能性があります。また、くも膜下出血の場合には事前に「ものが二重に見える」「まぶたが落ちる」などの症状がみられることもあります。
脳卒中の疑いで倒れたら……緊急時の対処法を医師が解説
編集部: 身近な人が突然倒れて脳卒中が疑われる場合、どのように対処すればいいのでしょうか? 清水先生: 一刻を争う状態なので、すぐに救急車を呼ぶことが大切です。また、救急隊員が到着したら「いつまで普通の状態であったか」ということを詳細に伝えましょう。もし倒れた瞬間を見ていなかった場合には、「知る限り、最後に元気だった時間」を伝えましょう。その時間によって治療法が変わるので、これらの情報はとても重要です。 編集部: そのほか、伝えることはありますか? 清水先生: 既往症や現在服用している薬があれば、その内容も伝えてください。できればお薬手帳や、薬の現物を見せるといいでしょう。 編集部: 救急隊員が来る前にやるべきことはありますか? 清水先生: 倒れたときに体や頭を強く打っていないかを確認します。また、ネクタイやベルトなどを緩め、呼吸を楽にしてください。それから、水平に寝かせ、毛布などをかけて体が冷えないようにしましょう。 編集部: そのほかにも、気をつけることがあれば教えてください。 清水先生: 風呂場やトイレなどで倒れた場合には、救急隊員が搬送しやすい場所に運び、安静にしてください。もし、家族がすぐ病院へ連れていける場合には、車で搬送しても構いません。ただし、本人が運転するのは危険なのでやめましょう。 編集部: どのような姿勢で寝かせればいいのですか? 清水先生: 嘔吐した場合には、吐いたもので窒息することがないよう「回復体位」にします。回復体位は、横向けにして、上側の手を顎から顔の下に入れ、下顎を軽く前に突き出した姿勢のことです。これをすることで気道が確保され、呼吸が楽になります。体が後ろに倒れないよう、上側の足を前に出し、膝を90度くらい曲げておきましょう。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 清水先生: 脳卒中の治療は、時間との勝負。万が一発症した場合、できるだけすぐに治療を開始することが重要です。そのために重要なのは、脳卒中の初期症状について理解し、脳卒中を疑うのに必要な知識を身につけることです。いざというときの対応なども覚えておくと、身の回りの人が倒れたときに役立つでしょう。