補助金停止で苦境に立つ朝鮮学校、ひねり出した意外な対策が大人気 日本人ボランティアも次々応募、でも「美談じゃない」学校なのに保健室の先生すらいなかった
着任当初、保健室には古いベッドが2台あるだけでスペースの半分は物置になっていた。消毒液やばんそうこうは数点のみ。まずは机、タオル、新しい布団などを購入してもらった。 仕事を始めてから、自らの知る学校との格差に気付かされた。朝鮮学校には給食、図書室、プールの授業がない。健康診断や保健・衛生教育も自助努力だった。 子どもたちは保健室に来る前に傷を水で洗うことも知らなかった。この学校ではそれまで「保健室の先生がいない」ことが当たり前。学校に何が不足しているのか、気づけない状況だったことにも衝撃を受けた。 朝鮮語がわからず苦労することもあるが、仕事にはやりがいを感じている。それだけに、経営難で設備が十分に整わないことには不安がある。 「朝鮮語を話せる以外、子どもたちに違いはない。国は子どもたちの未来をきちんと考えてほしい」 ▽「学校の属性に注目した差別だ」 不支給を続ける埼玉県の姿勢には、学校外からも批判の声が上がる。埼玉県弁護士連合会は2013年、子どもの権利条約に反するとして、支給を求める会長声明を出した。15年には県に「警告」を突き付けている。
補助金問題に取り組む「有志の会」共同代表を務めている明治学院大学の猪瀬浩平教授は県の姿勢を批判する。 「属性だけに注目し、学校の補助金支給に差をつけることは明らかな差別だ」 猪瀬教授は文化人類学とボランティア学が専門だ。埼玉県が姿勢を変えようとしない中、個人でもできることを聞くと、「インターネットが普及した今だからこそ、同じ場を共有し、対話を大切にしてほしい」と提案してくれた。猪瀬教授自身、さいたま市内の農園で朝鮮学校の関係者と知り合った。その後、学校訪問や対話を重ねて歴史を学んだ。 猪瀬教授は強調する。「顔の見える人々が差別的な扱いを受けていると知ったとき、どう思うか。まずは、個人個人でつながり、関係を築くことが重要だ」 ▽ボランティアは「推しに恥じない行動したいから」 キムチ販売は今年で7年目を迎える。販売数は増えたが、購入者と学校が、支援する側、される側の関係が固定化されていた。