「夏の甲子園」中止の経済的損失約672億円の試算から透けて見えるもう一つの大会中止検討理由とは?
今回は、地方大会に参加する学校の総数を3700校と想定、一校当たりの平均支出金額を約 200 万円と仮定すると、約 74 億円となり、保護者ら応援団の一人当たりの交通費、飲食費、雑費などの支出額を約3000円と仮定すると、1 試合当たりの両校の応援団の支出は約 180 万円となり、大会全部の総計では約 65 億 7180 万円。地方大会が中止、或いは無観客開催となった場合、合わせて約 139 億 7180 万円の直接消費額の損失が推計されるという。 さらに同じ算出方法で夏の甲子園大会を試算すると直接効果は 171 億 5975 万円となる。直接的な損失だけで計約 311 億 3155 万円にものぼるのだ。 実は、この夏の甲子園大会の直接効果の試算には、大会主催者の収入、支出が含まれている。朝日新聞社が発表している大会運営の収支決算によると、2019年の101回大会では、総入場者数は、84万1000人で、有料入場者数は72万5183人。収入は6億5907万426円、支出は4億4415万9967円で差し引き2億1491万459円の剰余金が出ている。 収入のほとんどがチケット収入。甲子園大会は、NHKと朝日放送が中継しているが、放映権料は払っていない。 一方の支出は、出場49校に支給する旅費、滞在費の補助費などがベースになっている。49校に対し一校20人(選手18人、責任教師1人、監督1人)の旅費と滞在費の補助(1日一人4000円)が規定に基づいて勝ち進む限り支給されるが、足りない部分は、出場チームの持ち出しで、控えメンバーやコーチらの経費もチーム負担だ。また大会役員への経費、地方大会への補助金なども支出として計上されているが、審判などへの報酬も最低限に抑えられており、ほぼボランティアによって成り立っているのが実情。しかも、甲子園の使用料はゼロ。ただ大会費として1億円を超える支出を計上している。ここには朝日新聞社サイドの運営必要経費が含まれていると考えられている。 そこまで支出を絞っていても無観客での開催となると興行形態がチケット収入に頼っているため、収入は、ほぼゼロとなり、2019年の大会で言えば、支出分の4億4415万9967円が、まるまる主催者の赤字となる。今大会の規模を考えると4億円規模の赤字は免れないものと予想される。 ここ数年は、2億円近い剰余金という名の利益が出ていて、2018年からは「高校野球200年構想推進基金」が設立され、ここに剰余金の7、8割が充当されている。少子化、野球人口減少対策として「次の100年」をテーマに普及、振興、けが予防などの事業に使う資金として積み立てられているが、高野連の”金庫”に余裕はある。