「大阪にも100種類のチョウがいる」府大副学長が里山の大切さ訴え
「大阪にも100種類のチョウがいる」府大の副学長が里山の大切さ訴え 撮影:岡村雅之
大阪府立大学副学長で大阪みどりのトラスト協会会長を務める石井実さんが、東大阪市の府立中央図書館で「昆虫から見た大阪の自然」と題して講演した。石井さんは大阪でのチョウやセミの生態調査の成果を報告しながら、多様な生き物が共生する里山保全の大切さなどを訴えた。 【拡大写真付き】世界的にも貴重な固有種・適応王者「ギンケンソウ」大阪で展示
大阪でも100種類のチョウが飛んでいる
石井さんは昆虫生態学者で、大学研究室の学生らとともにチョウやセミの調査研究に打ち込む。石井さんによると、世界に生息している昆虫は100万種以上とみられ、日本では3万種が確認されているが、10万種程度は存在するのではないかと推定されるという。 チョウだけにしぼると、日本のチョウは約250種で、大阪でも100種類ほど生息する。分布を調査すると、北摂地域がチョウの種類、個体数とも多い。人が資源を活用するため、自然に手を加えて維持してきた里山が広がるからだ。 都市公園の場合、服部緑地など里山的景観を取り込むと、チョウが生息しやすい。まちなかの公園でも30種前後のチョウを観察することができ、上手に緑化すれば団地や高層住宅のベランダにもチョウが遊びに来るという。
絶滅が危惧される昆虫の半数が里山に生息
石井さんが会長を務める大阪みどりのトラスト協会は、市民ボランティアの協力を得て、里山保全に取り組む。代表的活動地の1つが府緑地環境保全地域「三草山ゼフィルスの森」(能勢町)。かれんな姿からゼフィルス(西風の妖精)の愛称を持つ小型のチョウ、ミドリシジミ類の貴重な生息地だ。 日本にいるミドリシジミ類25種のうち10種が集中して生息。中でもヒロオビミドリシジミにとっては、府内唯一の生息地であり、日本の分布の東限になっている。協会では里山林の育成によるヒロオビミドリシジミの保護や、チョウ類の多様性確保のための下草刈りによる林内整備、不法採集防止などの巡視活動などを継続的に実施している。しかし、里山の重要性が理解され始めた一方で、大阪を含む日本各地で里山が急速に姿を消しつつある現実も否定できない。 都市化に伴い里山が減少するほか、放棄された里山でササが繁殖すると、昆虫たちの食草や住みかとなる背丈の低い植物が減り、昆虫が生息できなくなる。安価なタケノコや竹製品の輸入攻勢を受けて竹林の管理が行き渡らなくなり、里山が竹林に侵食される事態も相次ぐ。 「絶滅が危惧される昆虫の半数が里山に生息している。里山を守ることは生物多様性保全のかなめであり、後世に伝えたい日本の原風景を守ることにもつながります。大阪でも里山保全活動を活発に展開している。今がんばらないと日本らしい生き物がいなくなるという危機感をもって活動しています」(石井さん)