「ふるさと住民登録」は地方衰退の歯止めになるのか…「税の使われ方」を識者が疑問視
少子高齢化、人口減少による地方衰退に歯止めをかけるきっかけとなるか。先月29日、政府の有識者会議「新しい地方経済・生活環境創生会議」の初会合で提起されたのが「ふるさと住民登録制度」。コロナ禍以降のリモートワーク浸透で注目を集める二拠点居住の際、都市住民がもう一つの拠点を構える自治体に2カ所目の住民登録を可能にするなど、地方と継続的に関わりを持つ「関係人口」増加を目指したもの。 北海道千歳市「ラピダス」狂騒曲…半導体製造メーカー進出で土地や平均家賃は2倍に! そこで注目されるのが住民税をもう一つの自治体とシェアする分割納税で、財政面で効果が期待されている。 ■税の“無駄遣い”抑止につながるか 「一部人気リゾート地を除き、第2の住民票を登録してもらうには、自治体に相当な自助努力が求められます。ただ、自治体に直接入ってくる税収が増えることで、使途の無駄が減るかもしれません」(不動産アナリストの長谷川高氏) 長谷川氏が疑問視するのが、地方に交付、分配される税の使われ方だ。 「今多くの自治体がよりどころとしているのが国から交付、分配される税金です。しかし、地方の役人と接していると認識のズレを感じる場面がたびたびあります。税収減、財政難に直面する中、『自分たちの(地元から得た)お金じゃないので、遠慮なく使ったらいいじゃないですか』と悪気なく話す人が少なくありません。地方にはやたら立派な庁舎や博物館、観光施設など、いまだに必要性や採算性に疑問符がつく箱物が見られます。一方、維持管理コストがかかる給食センターなどの施設が今、民間に払い下げられている状況です」 2050年までに20代から30代の女性が半減し、全体の4割、744の自治体が最終的に消滅するといわれる中、鮮明となりつつあるのが自治体間格差だ。 「台湾の半導体企業TSMCを誘致した熊本・菊陽町のように税収増で潤い、人が集まり地価が上昇する自治体がある一方、インフラ利用料の値上げや住民サービスを削らざるを得ない自治体も出てきています。二拠点居住には交通費や二重の固定資産税、維持管理費などコストがかかるので、空き家取得に優遇制度を設けるなど踏み込んだ施策も必要でしょう。ふるさと住民登録に諸問題を根本解決するインパクトは期待できませんが、直接入る新税はありがたいものでしょう」(長谷川氏) 出生率低下、若年層流出など加速度的に衰退していく中、国交省によると東京圏の20代の約半数が地方移住に関心を持っているという。だが、ふるさと納税同様、税の流出懸念で都市部の自治体からの反発も想定される。