「無人餃子」閉店ラッシュの中、なぜスーパーの冷凍餃子は“復権”できたのか
マルハニチロが14年ぶりにカムバック
分かりやすいのは、14年ぶりに冷凍餃子市場にカムバックしてきたマルハニチロ(東京都江東区)だ。 2024年7月に発売した「赤坂璃宮の餃子」は、その名の通り高級中華・赤坂離宮監修のもとで素材にこだわった高級餃子が「水なし・油なし」で手軽に調理できるというのが売りだ。 また、大阪の中華料理店から餃子の製造・販売メーカーとなった「餃子計画」が2024年9月から発売している「創業の味 生餃子 12個」も分かりやすい。 一般的なスーパーの冷凍餃子というのは、餡を皮で包んだ後に蒸してから冷凍する。しかし、この商品の場合は餡を皮で包んだ「生」のまま急速冷凍している。このような製法をすることで、具材の旨みや香りが抜けないという。 確かに、料理をする人は分かるだろうが、炒め物でも蒸し物でも、一度加熱したものを温め直すと味や香りが若干落ちる。そこで、熱を入れるのは最小限のほうがいいという発想である。 このような形で、各社がスーパーの冷凍餃子の質や顧客満足度を競い合うように上げていけば当然、市場は盛り上がる。そうなると、「これまで無人販売店で売っている餃子がおいしいと思って買ってたけど、スーパーで売っている冷凍餃子コーナーも充実していいじゃん」という感じで、客がスーパーの冷凍餃子売り場に戻ってくるというワケだ。
「閉店ラッシュ」の要因は他にも
もちろん、「閉店ラッシュ」の要因はそれだけではない。コロナ禍で「24時間無人で餃子が買えるなんて面白い」と注目を集めた「強み」の部分が、近年の餃子ブームで「近場にある有名な店に行けば、どこでも冷凍餃子が買える」という状況になって、かすんでしまったこともある。 冷凍餃子は参入障壁が低い。イオンやライフといったスーパーのPB(プライベートブランド)はもちろん、大手コンビニ3社、無印良品などもオリジナル冷凍餃子を販売している。 極端な言い方をすれば「やる気さえあれば誰でも参入できる」ジャンルだ。実際、UFOやネッシーなどダイナミックなスクープが一面に踊ることで知られる『東京スポーツ』も、少し前に「東スポ餃子」という冷凍餃子の販売に乗り出している。 この動きは2024年に入ってからさらに加速しており、これまで冷凍餃子に無縁だったプレーヤーが「オリジナル冷凍餃子」の販売に乗り出している。 その代表が、ドラッグストア大手のウエルシア薬局(東京都千代田区)だ。同社初の冷凍食品として「黒豚をちゃんと感じる幸せの肉餃子」を2024年4月に発売。2023年に「ドラックストアにあったらうれしい食品」に関するアンケートを行ったところ、冷凍おかず、特に冷凍餃子を求める声が最多だったため、開発をスタートしたという。