ドライヤーが初日売上1億円超。快挙はどのようにして達成されたのか?株式会社cadre代表 藤巻滉平インタビュー
事業は1つの仮説検証。7社の起業を経て見えたもの
──では、そもそも起業家になろうと思った経緯をお聞かせください。 父がビジネスをやっている光景を見ていたという背景もありますが、小学校の時に通っていた塾の「起業家育成合宿」はきっかけの1つかもしれません。そこでビジネスコンテストのようなものがあり、プレゼンをしたのが、起業家としての原体験です。 その後、大学時代に家庭教師と生徒のマッチング・派遣サービスを提供する会社を設立。同時にウェブの受託開発会社もつくり、その売り上げ資金でもう1つの事業のほうも回していました。 ──ふたつの事業を始めたのはどのような理由から? 自分が「面白いな」と思った仮説が正しいかどうか、社会実装して実験していくという過程が好きなんです。 「ITでうまくいくなら、同じスキームで派遣事業もできるのではないか」と、実験をビジネスの場でやっている感覚でした。そこから事業の幅が広がり、今でも店舗ビジネスを通して仮説を検証している感じです。 ──cadre以外にはどのような事業を? これまで、売却と新事業立ち上げを繰り返してきて、cadreで通算7社目になります。 今は家電ビジネスのcadre以外にシーシャラウンジや会員制のBar、味噌汁専門店「みそめぼれ」も経営しています。みそめぼれは47都道府県の味噌を揃えたお店で、テレビでも何度か取り上げていただきました。 ──たくさんの事業を並行して見るのは難しくないでしょうか? 自分のリソースを確保することが難しいですね。 事業の根幹は、業種が違ってもそんなに変わらないと考えているので、問題は各社に必要なタイミングで適切なアクションをできるかどうか、自分が事業の状態を見て動けるようにするためのリソースの確保です。 「ビジネスは仕組み」だと思っていて、いかに仕組みをうまくつくるか、自分が作業しなくてもよい仕組みをつくれるかが肝だと考えています。
目標達成には、タスクを「できる単位」まで因数分解していく
──ビジネスで難しい部分はどんなところですか? 家電ビジネスでいうと「知らないことが多い」というのが1つの難題でした。 工場の選定や流通の仕組みをどうするかなど、本質的な課題を洗い出して、そこに必要な手を打っていく、ということをひたすら続けたのですが、「知らない」状態だと次のステップを目指すのが難しい。 なので、まず知らない・わからない要素をテーブルに並べて、言語化することからはじめました。そして「知らない」→「知っているけどわからない」→「わからないところが何かわかる」→「わかる」→「できる」という状態にしていきます。タスクが「達成できる単位」になるまで因数分解する作業です。 今の時代、検索すればある程度の情報はでてきます。先人たちが遺した本もたくさんあり、周りに相談すれば詳しい人もいるはず。「それならば、できないはずはない」と思っています。 ──いくつもの会社を経営されているわけですが、チームビルディングで難しいところは? 自分がいなくても回る状態をつくることでしょうか。いわゆる仕組みづくりですね。 人には得手不得手があって、不得意なことをしてもらうのが一番コストがかかる。なので、最適配置を重視しています。 それと、店舗を経営してることもあり、現場のマネージャーが優秀であるかどうかも非常に重要です。自分に近い人たちをいかにマネージメントして育てられるかで、部下や現場への伝達率が変わってくると思うので、マネージメントクラスのメンバーとのコミュニケーションはかなり大事にしています。 ──事業で目指すゴールや、ご自身のゴールを教えてください。 40代になったら教育系の事業をしたいと考えています。 「自分が長くコミットでき、社会にとっても価値あるものは何だろうか?」と考えたとき、それは教育なのではないかと思うのです。 私が考える教育とは、学びたい人や子どもが「何かに興味を持ち、それに主体的に挑戦できる状態」をつくること。対象はなんであれ興味を持ち、それを「やりたい」と思えることはやはり大事だと、自分の経験からも実感しています。 いつか、幼少教育や中学生くらいまでの教育、あとはギフテッド教育などを支援できるような事業を立ち上げたいですね。教育は時間もお金もかかるので、自分も長いスパンで取り組む必要がある。だからこそ、やりがいも意義もある。そう考えています。 教育を通じて、子どもたちが自分の好奇心や可能性に触れ、「うっかり上を目指しちゃう」みたいな、そんなことがやってみたいです。