今年も相次ぐクマの出没 変わりつつある人間社会とクマの習性
長野県などで最近、クマの人里への出没が目立ち、11月ごろにかけて各地で捕獲などの騒ぎが相次ぎそうです。長野県大町市では5月以降140余件ものクマの目撃情報があり、3日までに5人が負傷しました。クマの餌となる山の木の実などの不足や、中山間地の過疎化、農業衰退など人間社会の変化も反映しているとの指摘もあり、背景は複雑です。
クマの捕獲件数は再び増加傾向
北アルプス山麓に位置する大町市で9月20日、自宅庭先にいた中年の男性が、28日には同県朝日村と山ノ内町の山林、河川などで、10月3日には長野県小川村の山林でそれぞれ男性が襲われ、けがをしました。大町市は2010年の熊の大量出没以来4年ぶりに「クマ出没警戒警報」を出し、警察、地元猟友会と連絡を取りながら警戒を呼びかけています。同市内では9月だけで107件もの熊の目撃情報があり、同市消防防災課は「餌となる山のドングリなどの不作も影響しているのではないか」と話しています。 長野県では2012年10月に県庁所在地・長野市のJR長野駅の在来線ホーム付近にクマが現れて大騒ぎになったこともあります。 環境省によると長野県のクマ類による人身被害は大量出没があった2010年に14件14人、2012年に7件7人。今年は8月までに5件5人です。クマの捕獲(捕殺を含む)件数は2010年に430頭、2012年は448頭に上りました。昨年は138頭に落ち着きましたが、今年は7月までに147頭を数え、再び増加傾向です。 野生生物の保護などに取り組んでいるWWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン・東京都港区)のまとめによると、野生鳥獣による農作物被害額は、農林水産省の統計で1999年度から200億円前後で推移し、クマによる被害額は全体の2%程度です。クマの場合に問題になるのは人身被害があることで、環境省の統計によると2002年以降、ヒグマとツキノワグマによる全国の人身被害は年間40~80人の年が多いものの、2006年には145人、大量出没した2010年には150人に上りました。WWFジャパンは、クマが安定して生息する東北、甲信越、北陸地方で事故が多いとしています。