「総合力の高い」台風19号 列島各地でさまざまな風水害の可能性も
大型で猛烈な台風19号が本州に上陸する可能性が高まっている。今年9月に上陸した台風15号は、暴風による被害が中心だったが、今回は列島のどこでどのような風水害を引き起こすか分からない「総合力の高い台風」だ。 台風の進路だけにとらわれず、日本全国の広い範囲で、さまざまな風水害に対して、厳重な警戒が必要になる。
非常に強い勢力で上陸する可能性高い
気象庁によると、9日までの進路予想では、海上を通過する可能性も高かった。しかし、新たな進路予想では、その可能性は低くなり、紀伊半島~東日本にかけて上陸する可能性が高まったという。仮に予報円の中心を進むと、静岡県に上陸するコースとなる。ただ、大型で、暴風域、強風域とも広いため、コースが多少ずれたとしても、広い範囲で影響を受ける恐れがある。中には、半日近く、暴風域に入る地域が出てくる可能性もある。 現在の予想では、非常に強い勢力(最大風速45メートル)を維持したまま、接近、上陸する見込み。これは、昨年、近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号に匹敵する勢力だ。気象庁によると、上陸時の最大風速の観測を始めた1991年以降、非常に強い勢力で上陸した台風は1991年台風19号(長崎県に上陸)、1993年台風13号(鹿児島県に上陸)、2018年台風21号(徳島県に上陸)の3個しかなく、日本に上陸する台風としてはこれまでになかなか経験したことがない最強クラスの台風といえそうだ。
雨の期間が長めに
今回の台風は、大雨への警戒が必要だ。台風本体の雨雲がかかる前から、湿った強い風が山などの斜面に吹き付けることで、雨雲が発達しやすくなる。 気象庁によると、仮に台風が予報円の中心を通ったとすると、神奈川県西部や東京都多摩地域、埼玉県秩父地方、群馬県西部などで南東から吹き付ける風によって大雨となる可能性があるという。こうした地域は利根川、荒川、多摩川といった河川の上流域にあたるため、下流域でそれほど雨が降っていなくても、急に河川の水位が上昇するようなケースも考えられるため、河川の増水、氾濫とともに、低い土地の浸水にも警戒が必要だ。山間部などを中心に、土砂災害の恐れもある。 12日正午までの24時間に予想される雨量は多いところで、東海・近畿地方300~400ミリ、関東甲信地方・伊豆諸島200~300ミリ、東北地方100~150ミリ、四国地方100~200ミリで、その後、雨量はさらに増える見込みだ。
「風水害の百貨店」のような台風の可能性
沿岸部では高波にも警戒が必要だ。過去を振り返ると、2004年台風23号(大型で強い勢力で高知県に上陸)では、高波で堤防が決壊し、倒壊した住宅もあった。なお、消防庁によると、この台風は、全国各地で土砂災害や河川の増水、高波などが発生した「風水害の百貨店」のような台風で、死者・行方不明者は全国20府県98人に上った。 台風19号も大きさは2004年台風23号と同じ大型で、勢力はこれを上回る予想となっている。接近、上陸する地域はもちろんのこと、少し離れた地域であっても台風の影響で何らかの災害が起こりうる可能性があることを肝に銘じて、早めの備えを心掛けたい。