町田啓太×渡辺大知×金田哲×柄本佑の友情をいつまでも 『光る君へ』で輝いた“平安F4”
『光る君へ』がいよいよ最終回を迎える。NHK大河ドラマ第63作目となる本作。平安時代中期の貴族社会を描ききるというのが新鮮で興味深くもあった。回を重ねるごとに、史実とフィクションを絶妙なバランスで織り込んだ物語が関心を集め、SNSでも大きな話題となった。 【写真】物語序盤の若かりし頃の公任(町田啓太)と斉信(金田哲) 戦争のない平和で雅な平安時代の宮中が舞台とはいえ、権力争いの火種は絶えずあり、実際よく出火するし、呪詛されたりもする。そんななか、序盤から最終回まで登場し、作品を通してそれぞれに個性を発揮し、最高権力者となった道長(柄本佑)を含めた“平安F4”の存在は忘れられない。 第47回「哀しくとも」では、太宰府に行ったまひろ(吉高由里子)が「刀伊の入寇」に巻き込まれ、異国の海賊の攻撃に遭うという大事件が起きた。朝廷への解文が届くが、摂政・頼通(渡邊圭祐)は太閤となった道長に報告せず、様子見を決め込む。危機を知らせても朝廷は動かないと予想した隆家(竜星涼)が実資(秋山竜次)にも状況を伝え、道長は実資を通して被害状況を聞いた。当然、道長はまひろのことが心配でたまらない。 隆家らによって敵の侵攻を食い止めることができたが、他人事で全く危機感のない公卿たちに生真面目な実資は苛立った。道長は肝心なことを相談どころか報告もしない息子・頼通に腹を立てていた。まひろが無事だったから良かったものの、まひろに何かあったら費用を気にして何もしなかった頼通はずっと父に恨まれるところだったのだ。 そして、隆家から朝廷に刀伊撃退の勲功者への褒賞を願う文が届き、実資は「褒賞を与えるべし!」と強く主張したが、公任(町田啓太)や行成(渡辺大知)は必要ないと反論した。隆家たちが刀伊撃退を行った時点で朝廷は追討を命じていなかったという意見を曲げず、褒賞を与えられたのは、結果わずか1人だけだった。 曲がったことの嫌いな実資は「力及ばず褒章はわずか一人のみ」ということに納得できず、その夜に道長のもとを訪れた。そこへ同じように道長に褒章の件を公任が報告にやってきて、実資と鉢合わせした。 帰る実資を見送りつつ、察しのいい公任は、道長がすでに実資から報告を受けていたことで今まで見せたことのないような不機嫌な顔になる。 「伊周亡きあと、お前にとって次の脅威は隆家だ。いっそのこと、戦いで死んでおればよかったのだ。大宰府でこれ以上、力を付けぬよう、俺はお前のためにあいつを認めなかった」と、怒りを隠せない公任。とはいえ、道長自身は出家もしていて、頼りないとはいえ息子の頼通が後継者として頑張っている。 「国家の一大事にあっては隆家をうこう言う前に、起きたことの重大性を考えるべきである。何が起き、どう対処したのか。こたびの公卿のありようは、あまりにも緩み切っており、あきれ果てた」と道長は真顔で批判。傷ついた公任は「俺たちをそのように見ておったのか。俺たちではなく、実資殿を信じて」と実資に嫉妬しているかのよう。 そこに訪れたのが斉信(金田哲)で「まぁまぁ、まぁまぁまぁまぁ。何をもめておるのだ」とやってきて、我に返ったように立ち去る公任を道長と斉信は見送った。 「どうしたの?」どんよりと重くなった空気を一瞬で明るく軽やかにするような斉信の声に道長も苦笑いするしかない。「まぁ、何があっても俺は道長の味方だから」と屈託ない笑顔で語りかける。 平安F4は平安貴族として教育を受け、権力争いの真っ只中に育ちながらも、友人としての関係性はずっと変わらないところが微笑ましくもあり、長い間一緒にいるから家族のような身内感覚になっているのも心強いのかもしれない。 怒って実資に嫉妬したままの公任を放置するのではなく、斉信から事情を聞いた行成が翌日、公任を訪ねていた。拗ねたような公任は行成に「道長とやりあったことがもう噂になっておるのか」「斉信のおしゃべりめ」などと悪態をつくような素振りをしていたが、行成が公任の「和漢朗詠集」を素直に褒め、自然に接しているうちに「されど、何であんなこと言ってしまったのか」と後悔の言葉を口にした。 「それは道長様を大切にお思いになるゆえにございましょう」と静かに微笑む行成。最終回目前になって、政治的な思惑をとっぱらったとしても、みんな道長のことが好きで、身内のように大切に思っていたという友情のかたちが見えた。道長に権力が集中したのは、才能あふれる友人の支えがあったからこそというのは間違いない。F4の輝き、最後まで見届けたい。
池沢奈々見