患者がコート着る廊下、雨漏りにバケツ…老朽化進む市立病院の改築計画が突如見送り 市長は自身の任期後の着手を“約束”、職員「はらわた煮えくり返る」
老朽化した上越市立上越地域医療センター病院(新潟県上越市)の改築着手を市が2024年度見送ったことで、病院職員に不安と反発が広がっている。事前に説明はなく、老朽化に起因する不便や負担増を強いられながら働く職員からは「建物は限界にきている。患者のために改築の約束を守ってほしい」との訴えが相次ぐ。 【写真】老朽化した上越市立上越地域医療センター病院 「はらわたが煮えくり返るような思いだ」。病院の理学療法士、久保田悦章さん(36)は突然の方針転換に憤りを隠さない。 上越市は6日の市議会で、病院の経営環境が厳しい上、内部留保資金も枯渇する見込みで、改築した場合は償還が経営を圧迫し、病院の存続が危ぶまれると説明。閉院する新潟労災病院から歯科口腔外科と回復期リハビリ病棟の入院機能を引き継ぎ、収支が改善するとみられる2026年度の状況などを見て改築の時期を探るとした。 市によると、病院の古い施設では第1、2病棟が1973年に完成。築50年を超えており、改修しながら使っている。複数の職員によると、冬場は廊下が冷え、患者がコートを着て検査やリハビリに向かっており、病室と廊下の寒暖差が激しい。雨漏りもあり、バケツを置いている箇所もあるという。 久保田さんは過半数の職員から選ばれた「労働者代表」を務める。久保田さんら職員は議会説明があった6日に方針変更を聞いた。報道で知った職員もいるという。久保田さんは「現場に何の相談もなく方針が変わるのはおかしい」と批判する。 9日には病院で職員向けの説明会が開かれ、急きょ中川幹太市長も出席した。関係者によると、約150人が参加し、市長が「苦渋の決断」とした上で収支改善が見込まれる26年度を念頭に「2年後の改築(着手)を私の言葉としては約束したい」と理解を求めた。 一方で、市長は自身の任期が2025年11月までだとし「どこまで責任を果たせるかは分かりませんが」とも述べて途中退席。予定していた経済団体との懇親会に向かった。病院職員との話し合いよりも大事な会議なのかと問う声もあったという。市長は10日にも病院を視察し、職員の話を聞いた。 中川市長は13日、 報道陣に対し「新年度予算編成の時期なので(病院への投資に)充てられるものは充てていきたい。現場を知らないといけないので、定期的に病院を訪れようと思っている」と話した。