【#佐藤優のシン世界地図探索65】ヒズボラのイスラエル地上侵攻が始まる!?
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく! * * * 佐藤 6月18日にイスラエル軍(以下、イ軍)はレバノン攻撃の作戦計画を承認したと発表しました。つまり、すでにイスラエルとイランの争いの位相は変わっているのです。 ――ヒズボラ(イランが支援するレバノンの武装組織)に対して、レバノンに先制攻撃が入るのですか? 佐藤 ヒズボラがイスラエルに侵攻するという確定情報(インテリジェンス)があれば、イスラエルが先制攻撃に入る可能性があります。イスラエル側は「計画の承認は攻撃の開始ではない」とは言っていますがね。 ――そんな場合のイ軍はやる気十二分ですね。 佐藤 だから、これはかなりヤバいのです。 ――徹底的な空爆ですか? 佐藤 空爆だけでは終わりません。これは地上戦まで行くと思います。 ――ヒズボラが北朝鮮と作ったトンネルをぶち壊しながら、レバノン中部まで一気に進撃ですか? 佐藤 逆に、レバノンのヒズボラがイスラエル北部に入ってくるんじゃないでしょうか。イ軍は今、ガザに張りつけになっている状況ですから、その可能性が排除されません。 ――イ軍は兵力が足らない? 佐藤 レバノンに攻め入るには、全く足りていません。 ――ヒズボラはトンネル網をレバノン南部とイスラエル北部国境付近に張り巡らしていますから、イ軍の布陣する後方に出て奇襲をすることも可能ですね。 佐藤 あり得ますね。イラン・イラク戦争ではイラン軍が押してはいたものの、現場はイラン兵の死体の山でした。イラク軍は毒ガスの中にも突っ込んで「殉教だ」と自爆攻撃をしてきます。ヒズボラはシーア派ですから人命軽視、自爆覚悟です。ジープ200台ぐらいで「アラーアクバル」と叫んで突っ込んできたらどうなるでしょうか。 ――その戦い方では、ハマスとの戦いなど幼稚園のお遊戯ですね。 佐藤 レベルが全く違いますよ。学芸会とプロの劇団の違いぐらいあります。 ――イスラエルのネタニヤフ首相がブリンケン米国務長官に対して、「同盟国なのに武器を渡さず制限するのは何なんだ?」と文句を言っていましたね。2000ポンド爆弾(米軍が使用する3番目に重たい約900kgの爆弾、地面に深さ11.5mの穴を開け、厚さ3.4mのコンクリートを貫通可能。すなわち、地下のコンクリート建造物に潜む敵に致命傷を与えられる)を渡さないらしいです。 佐藤 文句を言うのはその通りだと思いますよ。 ――これは、「始めるからね」というイスラエルから米国への意思表示ですか?