積水化学「ペロブスカイト太陽電池」量産化を決断。国が全面支援する次世代エネルギー技術の勝算
この決定を踏まえ、積水化学はシャープの本社工場(大阪・堺市)の建物や電源設備、冷却設備などの取得および第1弾としての100メガワット生産ライン構築のための設備費用として900億円の投資決定をした。そのうちの半額を国の補助金で賄う。 政府がペロブスカイト太陽電池に期待を寄せることには理由がある。すでに先行して普及が進むシリコン系太陽電池では、中国企業が世界シェアの8割以上を占め、日本企業は太刀打ちできない状態となった。原料であるシリコンの製造から太陽光パネルの組み立てに至るまでサプライチェーンをすべて押さえ、低コストでの供給体制を構築しているためだ。これに対して、国は次世代太陽電池では挽回のチャンスがあると見ている。
というのも、ペロブスカイト太陽電池では原料であるヨウ素の生産で日本は世界第2位であるうえ、生産技術の確立でもリードしているためだ。 ■積水化学が生み出した独自技術の中味 積水化学の加藤敬太社長は「ロール・ツー・ロール方式でのペロブスカイト太陽電池の製造技術を確立している企業は当社以外にない。重要な特許も押さえており、簡単には追随できない」と説明する。 ロール・ツー・ロール方式とは、ロール状の基材フィルムに電極形成、電極加工、発電層形成といった作業を重ね、そのうえで再びロールにして完成させるといった技術だ。積水化学は塗工や封止方法などで独自の技術を確立し、製造中から始まる品質の劣化などペロブスカイト太陽電池固有の弱点を克服した。
前出の森田氏によれば、太陽電池フィルムの厚みは従来の太陽電池の約20分の1程度で、重さも10分の1~15分の1程度と、薄型・超軽量を実現した。積水化学は現在までに発電効率15%達成、屋外耐久性10年相当の確認、30センチメートル幅でのロール・ツー・ロールの要素技術完成といった技術開発の成果を上げているが、2025年に屋外耐久性20年相当、ロール・ツー・ロールの1メートル幅化を目標に掲げ、発電効率については2030年18%、将来はシリコン系に匹敵する20%以上を目指している。