万博では飛ばない…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ事業」に参画する老舗タクシー会社が明かした「現状と未来」
外国人富裕層がターゲット
アメリカでは1万機、イギリスでも400機以上が存在するとされるプライベートジェットだが、日本ではわずか80台ほど。それも大半は稼働していないという。そのため、まずは海外からの観光客が主なターゲットになる、と卓音さんは言う。 「たとえば新大阪から万博会場の夢洲まで行くとしましょう。どこまでの速度にできるかまだ決まっていませんが、時速300キロ程度だと仮定すると5~10分程度で到着します。金額はおよそ、1分9000円程度。 従来の交通インフラではアクセスがしにくかった熊野古道や高野山、琵琶湖といった自然豊かな観光地に富裕層のインバウンド客を運ぶことを想定しています。6~7人で相乗りしてもらい、40万円ほどのプランを打ち出していく予定です」 離陸場所であるポートの確保、着陸先の土地取得に機体代の先払い料金など、初期費用だけでも70億円にのぼる。それでも、すでに外資系コンサル会社や航空局OB、大手保険会社や証券会社、大手旅行会社などを巻き込み共同で事業に参画しているという。中堅のタクシー会社である「大宝タクシー」では、どのように資金繰りをしているのか。 「現状はファンドからの投資が中心で、特に外資系が占める割合が多くなります。もともと海外で市場があることと、今後日本市場への期待があることが大きい。 あとはCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)事業者やリース会社との提携を強めて、離陸場所なども他社が持っているものを使用させてもらい、いかにコストをかけずにやるかという方向で動いています。 タクシー会社がやるメリットは、着陸先などからの移動の足も必要であり、地域と提携して総合的な移動サービスを提供出来る点にある。資金力で劣っても、工夫次第でタクシー会社が母体でも充分に実現できます」(和音さん)
元自衛官が応募してきた
和音さんは「ゆくゆくは初乗り680円という利用しやすい金額で、事業を拡大させていきたい」と意気込む。そうなると気になるのは、いかにパイロットを確保するかということだ。 大宝タクシーでは年収約600万円で募集をしたが、年収1000万円超えも珍しくない職種だけに、簡単に人材が集まるとは思えない。しかし、卓音さんは「実は就職活動をしているパイロットは少なくない」と明かす。 「タクシードライバーも人材を確保するのは難しい業種です。当然、パイロットも同様の懸念をしていたのですが、実験的に1週間求人をかけただけで、資格保有者30人から募集がありました。 なかでも多いのは、元自衛官です。応募者に話を聞いていると、町工場のライン作業や、チェーンの飲食店で働いているケースが多かった。そういう方々にとって、民間のヘリ会社と近い年収約600万円という条件は魅力的だったそうです。 エアラインのパイロットは確かに年収1000万円超えもザラですが、採用人数はごくわずか。そんな背景からも人材確保にも不安はなく、むしろタクシーよりも事業拡大はしやすいと考えています」