演劇・映像部門のアン・リー氏、会見で口ずさんだ怪獣映画「モスラ」の劇中歌「6歳くらいのときに見た…私の中に根付いている作品」/高松宮殿下記念世界文化賞
世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第35回受賞者と同賞国際顧問による合同会見が18日、東京・虎ノ門のオークラ東京で行われた。5部門5人の受賞者が出席。台湾出身の世界的映画監督で演劇・映像部門の受賞者、アン・リー氏(70)は「日本が題材の映画を作ることが夢」と明かした。授賞式は19日、東京都内で行われる。 ♪モスラ~や、モスラ~ 米アカデミー賞監督賞を2度受賞している名匠、リー氏。台湾メディア7社も参加した受賞者個別会見の中で、日本の伝説的怪獣映画「モスラ」(1961年公開)の劇中歌を歌いだした。 「6歳くらいのときに見たのかな。大好きな映画で、私の中に根付いている作品だよ」。17日に東京タワー周辺まで散歩した際、「東京タワーにモスラのタマゴ(繭)がついているシーンを思い出しちゃって、この歌が頭から離れなくなった」と大笑いした。 台湾で生まれ20代で渡米して映画製作を学び、米国を拠点に多数の名作映画を世に送り出してきた。戦後の1954年生まれだが、45年まで台湾が日本統治下にあった影響は教育システムなど子供の頃も残っていた。「台湾、日本、米国の3つの文化が私の根本を形成している」と明かす。 小津安二郎、黒澤明、大島渚といった昭和の日本を代表する映画監督の名前を次々と挙げて「大きな影響を受けた」。さらに「サムライ映画、特に『座頭市』が好きでね。いくつものシーンを覚えている」と熱っぽく語った。 「日本を題材に、日本の俳優を使って映画を撮ることは私の夢の一つ。かなっていない夢だけど、常に心に留めていれば、夢はいつかかなうと思っているよ」 多数の国際的映画賞を受賞し功成り名遂げて世界文化賞受賞に至った今も、「まだ『映画とは何か』という悩みを抱えている」と吐露する。3D、配信、AI(人工知能)などの出現で映画界も大きく変化している。「変化を受け入れながらも、今こそ東洋の力や考え方、独自の映画を見直すべきではないか。私もまだ、進化の最中です」。10月で70歳となってもなお、映画製作にかける意欲は健在だ。 ■アン・リー(李安、Ang Lee)