【特集】「あんだは、なすてロミオなのっしゃ」東北弁で演じるシェイクスピア 方言にかける想い
ミヤギテレビ
多賀城創建から1300年を迎えた今年。 国宝に指定された「多賀城碑」。 そして、多賀城の象徴ともいえる、「南門」の復元。 祝賀イベントも数多く開かれ、東北の歴史に関心が集まった1年だった。 そのなかで先月、異彩を放つ市民劇が上演された。
東北弁のシェイクスピア
イギリスの劇作家、シェイクスピアの原作「冬物語」を、古代東北・陸奥国の中心、多賀城に舞台を置き換えた「みちのおくの国の冬物語」。 奈良の都から今の東北地方を統治するために派遣された陸奥守は、妻が不貞をはたらいたと誤解し、嫉妬心から大切な家族や家臣を次々に失うという物語。 演じたのは、地元の学生や社会人などアマチュアの劇団員たち。 そして、この芝居の最大の特徴は… 役者 「おだずなよ(ふざけるなよ)」 「おれはおしょすい(はずかしい)」 「どいな?むんつけだ(ふてくされた)顔」 「おっかねが(恐ろしい)」 「なにほでなす(間抜けなこと)語ってんだが 見でみさいん」 「もすこいな(かわいそう)」 東北弁のシェイクスピアだ。 観客は・・・ 観客 「いぎなり(とても)よかった」 「難しかったけど面白かった」 「先入観で難しいと思ったが、シェイクスピアのイメージだったがなじみやすい身近な感じに聞こえる」 シェイクスピアは優れた人間観察力と心理描写を武器に、16世紀から17世紀にかけて作品を生み出した世界的な劇作家で、400年以上にわたって日本でも繰り返し上演されてきたが、東北弁で演じられるのは極めて異例だ。 役者 「東北弁? シェイクスピアのイメージと違うが、なんかこれ合っている!みたいな」 「東北弁でシェイクスピアをやるのはそれだけで面白い」 「基本的な人間の喜怒哀楽や生活の悩みは一致している」
劇団シェイクスピア・カンパニーは1992年に設立
東北弁でシェイクスピアを演じることを目的として、1992年に設立された劇団シェイクスピア・カンパニー。 主宰者で、脚本・演出を手掛ける下館和巳さんはこう語る。 下館和巳さん 「『むんつける』なんて標準語にできない。方言じゃないとつかめないというこの感覚。方言は標準語では何と言うのか分からないから方言なのである」 塩釜の海産物店に生まれた下館さんは、東北一円の漁師や仲買人の方言が飛び交う環境で育った。 下館和巳さん 「訛りがなんとも愛おしいという中で育った。僕の耳はアクセントや訛りの森」 その後、イギリスに留学中、シェイクスピアに魅せられ、帰国後に東北学院大学の教授としてシェイクスピアを教える傍ら、劇団を率いてきた。 この30年あまりの間、青森の霊場・恐山や縄文遺跡、鳴子温泉など東北各地でその土地の方言を使ったシェイクスピアを上演。